金沢後半。
金沢海みらい図書館は多くの観光地と異なり駅の北側にある。バスは駅前のロータリーからは出ず、少し離れたバス停を使わないといけない。窓からの景色は観光地感はなく、道路の沿線にスーパーマーケットや飲食店がずらりと並んだ田舎らしいものになる。そこで突然現れる巨大な白い建物が、金沢海みらい図書館になる。
写真でこそ見たことあれど、やはり実物は圧倒的な存在感。
近くで見ると外壁は同じ形のカバーを敷き詰めて構成されているのが分かる。もしかして汚れたら交換可能な設計なんだろうか。
ドキドキしながら建物内へ入る。ここでは静かな環境をつくるために1階が児童図書コーナー、2階と3階が一般図書コーナーと分離されている。螺旋階段を登り潜水艦を思わせる丸みをおびた扉を抜けると、一面真っ白の広大な空間が現れる。
まず圧倒されるのが2階と3階を繋げた巨大な吹き抜け。初見では蔵書数よりも解放感を優先した大体な設計だなぁとか考えていたが、実はそれだけが理由ではない。館内は柔らかい自然な明るさで保たれていて不思議な居心地の良さがあるのだけれど、天井を見上げると照明器具が一切ないことに気づかされる。
みごとにつるつる。
ではどうやって明度を確保しているのかというと、壁に空いている無数の穴(窓)から採光しているらしい。つまりこの大胆な吹き抜けはスペース全体に日光を行き渡らせるために用意された構造だったという訳。
夏は眩しくなったりしないんだろうかと余計な心配が浮かんだりもするけど、恐らく窓の材質や太さでうまく緩衝されるよう計算されているのだと思う。
このアイデアが所謂”オレオレ”な感じがしないのは、閉塞的な場所にならないように、書架の一覧性があるように、という図書館をつくる上で最初に挙がるだろう課題に真摯に取り組んだ結果生まれたものであることが分かるからだと思う。真っ白な内装も過剰に清潔感を主張しているという感じではなく、外からの光で色が変わるなどうまく調和している印象を受ける。市民にも愛されている模様で、この日も勉強している学生や新聞を読むお爺さんまで幅広い年代の人で一杯だった。館内にあった図書館だよりによると駐車場が埋まって困るという苦情が来るくらい人が来ているらしい。
蔵書も漁ってみたが建築関係の本もやはり充実していて、その中には設計者によるこの図書館の解説本もあり面白いことが色々書いてあった。
例えば3階にあるこの謎のスペース。
ガラスで囲ってあるだけの奇妙な場所だが、実はこれが換気システムらしい。ここは図書館の外側にある構造体と繋がっていて室外機の役割を果たしている。
その他にも館内の書架は全て特注で、足元には細かい穴が開いておりそこからも換気をしているらしい。目立たない形で図書館全体に空気が循環する仕組みが用意されている。
海みらい図書館は本当に居心地が良く、もっと金沢の他の場所に行ってみても良かったもののダラダラ過ごしてしまった。以前人に勧められたカット・メンシックの挿絵が入ったバージョンの図書館奇譚を見つけて読んだりなどしていた。
短い富山金沢旅行はこんな感じ。そういえば金沢21世紀美術館の次の展覧会は好きな作家の一人である内藤礼の個展らしいので、また来ることになるかも。鈴木大拙館もリベンジしたい。