20251113

20251113

「テルマ&ルイーズ」を見た。リドスコは「エイリアン」から「最後の決闘裁判」まで一貫して男性の有害性を取り扱ってる監督だけれど、その部分が一番分かり易く表に出された作品だった。あのEDは今の時代でこそバッドエンドにするなと批判されそうだけれど、社会の枠組みを簡単に変えられないことを示しつつ、2人の尊厳を守った描き方を考えるとこれがベストと思う。2人が死んだかどうかはギリギリ分からない切り方にしているのも明らかにそういう意図でしょう。エモーションな作品ながらロジカルに舵が切られていて、そこから劇場版ウテナにてわざわざ次の城が見えてEDになる誠実さを連想したりもした。

20251115

現代音楽の動画を見ていたら松﨑国生さんの作品がレコメンドされるようになった。いくつか見てみたがめちゃ面白い。

タイトルだけ見ると野村誠さんのだじゃれ音楽的なやつかなと思ってしまうが、野村さんが音楽に詳しくない一般人を巻き込むためのフックとしてだじゃれを使っているのに対して、松崎さんは洗練された本気のコントをやっている。

「マリオギャラクシー」の映画化の話題から、switch1時代にマリオコレクションを購入していたことをふと思い出して原作をプレイしてみた。中学生時代に弟がプレイしているのを眺めていた時は子供向けな退屈なゲームだと思っていたが、今触るとアヴァンギャルドな印象を受ける。Wiiコントローラーの自由な入力体系は、優秀なデザイナーの手に渡った時に従来のゲームの枠からはみ出るような奇妙なゲームメカニクスを生む。マリオとはアスレチックゲームであり身体性を感じさせるゲームだったはずだが、マウスポインタで重力をコントロールして宇宙を漂うマリオを導いているとき、その奇妙さに頭がおかしくなりそうだった。例えるなら、ディズニーの優秀なアニメーターが「不思議の国のアリス」を映像化した結果、家族で安心して見に行けないサイケデリックすぎる作品が生まれてしまったみたいな話だ。

その文脈でいうと、いまWiiで最もプレイしたいゲームは「ディシプリン」なのだけど、マーベラスが移植してくれないだろうか…。

しかし「ギャラクシー」は他の3Dマリオと比べて自由度が無く、シーケンシャルというか音楽的である。デザイナーが新しいインタフェースと格闘するとき、プレイヤーに参加してもらう余白みたいなものを設計する余裕は消えてしまうのかもしれない。そこに至るには開拓を終えて枯れるプロセスが必要なんだろう。

20251116

tofubeatsのライブを見に恵比寿ガーデンホールへ行く。

しかし、週末ぶっ通しで作業をしていたせいかライブ開始から1時間くらいで体力が底をついてしまい、立ちながらうたた寝しているかのような状態に。今年の目標は自身が体力の無い側の人間であることを自覚した行動をすることだったのに、年末でミスってしまった。ライブの内容に言及する権利がない…。

最後の寿司スナイパーのMCでぐだついたとき、トーフさんが頑なに同じワードで話を締めようとすのをokadadaさんが「引き出し無さすぎる」といじってたのが二人のキャラクターを示す象徴的なやり取りに見えた。トーフさんは準備の人で、okadadaさんはDJのプロというイメージなので。

20251117

川田十夢さんがAIで音楽&MV制作しているのを知る。

明らかに映像の快楽原則を抑えた素材を採用していて、素人が適当に生成した動画とは仕上がりが違う。バンドデシネのビジュアルに日本人らしき労働者が出てくるのは大友克洋風にして日本人に刺さりやすくしているんだろう。全体のトーンを統一しているのは歌詞だと感じたが、ここはAIに頼らないオリジナルらしい。

自分はSunoAIでの作曲にトライしたことがあるが、作曲・編曲の知識や語彙が無いのもありまともな成果物が得られなかった。その一方で専門であるソフトウェア開発においては最終成果物に組み込めるレベルのソースコードが得られていて、結局使い手の実力がそのまま反映されるのがAIの世界というのはもう分かってきた。

川田十夢さんレベルの人なら、自分でゼロから作った作品を出した方が周囲の評判は良いのでは?と思ってしまったが、ご本人がしっかりステートメントで触れていた。

作曲も映像制作も、AIの手を借りずに今まで(2023年くらいまで)やってきました。なので使わなくても作れますが、使わないと作れない領域へ先行(潜航 / 閃光)したくて、このプロジェクトを立ち上げました。歌詞はすべてオリジナル。自著の引用だとか、新しく書き下ろしたりだとか、です。主に使っているAIはMidjourney とか Runway MLとか SUNO とか Claudeとか です。メロディをハミングで作ったり、MIDI楽器でイントロやリフを作ったり、外部機材でリズムを作ったり、構成ラフを描いたり、タイポグラフィや映像のつなぎ目のエフェクトを自作したり。MIDIで書き出して、楽器を1音単位で切り替えて埋め込んでみたり、プレイヤーごとに人格を作って掛け合わせたり、ギターを弾いていたころのリフやフレーズをファインチューニングしたり、変なことやっています。なので、全自動で作られる楽曲や映像とは、少しおもむきが異なると思います。楽をして凄いものを作るというよりは、苦労をしてショボい(けど固有のもの)を作る努力をしています。