見た。総合的にはがっかりというのが正直な感想。
自分がシンエヴァに求めていたのは新規性という意味での『シン』で、『Q』で『旧』劇場版にあたる部分は消化したから、ここからは誰も見たことが無いエヴァが展開されるのだと期待していた。それこそ、アニメーター見本市の『until You come to me』で描かれているような廃墟と化した街をひらすら歩き続けるような映画になっても全然良いと思っていた。
この期待は前半部分の第3村パートでは答えてくれている。ジブリ映画の生活描写をそのまま再解釈せず持ち込んだかのような微妙さはあれど、エヴァが意図的に描いてこなかった特撮セット(第三新東京市)の外側へ踏み出しているという意味で解放感のあるシーンになっている。
しかし、律子さんがゲンドウに向けて発砲した以降の展開は基本的に旧劇場版の焼き直しになっていて、巨大綾波や精神世界パートまで再現してしまう。勿論『破』のようにそのシーンの意味をオリジナルから書き換えることはしているのだけど、完全に新しいものが見たかった自分としてはあくまで反復なのかとガッカリしてしまった。
そもそも、旧エヴァンゲリオンが作品世界を解体しようとしたのは庵野監督が当時のアニメーション界隈の閉塞感に不信を抱いていたからであり、そうせざるを得ない動機があった。でも、庵野監督は責任を持った作品作りをするためのに自身の会社を立ち上げて、新劇場版はヴァーチャルカメラを導入するといった制作手法レベルでの慣習からの脱却を実現している訳で、今の環境で巨大綾波や精神世界パートを無批判に再現することに面白がれる部分も無く、無味乾燥な時間が流れているように感じた。どうせ実験的な映像にするなら、最後の実写映像に3DCGで描かれた人物を被せたパートを長尺でやるとかの方が良かったと思う。あれはアニメーションがオタクのものでなくメインカルチャーになった2021年の光景と一致した絵面なので。
とは言え、各シーンを分解してみれば見どころのある映像だらけで、シリーズの完結として尻すぼみなだけで、2時間半全く退屈させない良い映画だった。2回見ました。