20210221 第13回恵比寿映画祭と新千歳空港国際アニメーション映画祭短編特集2

日曜日。前日はMLE(私も一日目で参加!)を見ながら日曜日締め切りの作業を進めていたら結局3時までかかってしまった。眠気をこらえながら最終日の恵比寿映画祭を見に東京都写真美術館へ。

本当は何度か訪問して色んな上映作品を見たかったのだけど、状況が状況なので今年は一本に絞って『新千歳空港国際アニメーション映画祭 短編特集②―感覚を研ぎ澄ますアニメーション』を見た。

短編特集となると普通は相性の良い作品とそうでないものが両方出てくるものだけど、全作きちんと見どころがある素晴らしいセレクションだった。忘れないように印象に残った作品をピックアップしておく。

サミュエル・パシー、シルヴァン・モニーの《エコース》。老人ホームで暮らす人々の生活を描いた作品。皴が刻み込まれた老人らのゆったりとした時間の流れにフォーカスを当てていて、その動作を巨人が動いているかのように演出していくのが面白い。ラフな線と題材の相性が抜群で、また実際の老人ホームでサンプリングしたんじゃないかと思われる立体的な環境音も効果的だった。

マリアム・カパナッツェの《アバンダント・ヴィレッジ》。この作品がヤバいのは、上記の画像に映っている一枚絵のみで進行していくこと。この荒涼とした街の様子を、霧のエフェクトを重ねたり、絵のコントラストを変えて本来の鮮やかな色調を見せるといった演出だけで、時間ごとの街の表情を見せていく。14分の上映時間を(退屈させずに)これだけで成立させている。かなり衝撃を受けたのだけどネットで作者の名前をカタカナで検索しても全く情報が出て来ない。日本では殆ど紹介されてない作家なのかもしれないと思ったものの、どうも作者が1991年生まれとのことで、見つけられないのは本当の新人だからということらしい。どういう経緯でこれがいきなり出てくるのか…。

英語名で検索したらトレーラー?が見つかったので載せておく。

その他、ふるかわはら ももかの《かたのあと》、エイドリアン・ミリガウの《ゲニウス・ロキ》も気に入った。アニメーション界隈は才能に溢れた日本人作家が次々と登場していてすごい。

展示も見る。去年は一つ一つの展示が1時間級の映像作品というのもざらで、満足度も高いが時間もかかるというハードコアな内容だった。それに対して今年は断片的な視聴でも十分楽しめる作品が集まっていて、昨今の事情を踏まえてなのか去年の揺り戻しか分からないけれどすいすい歩いていける展示だった。

中でも印象に残ったのは、この記事のアイキャッチにも使っているチャンヨンヘ重工業の作品。上記の動画の通り、チャンヨンヘ重工業は音楽に合わせてテキストを出していくだけというスタイルの映像を制作している。映像の分野は一般的に言語に頼らず絵の力だけで説明しきることが良いとされることが多く、このスタイルは一見逆張りに見えてしまうものだけど、自分としては音楽に合わせて何かが現れるだけで気持ち良いよねという映像のプリミティブな快楽を追求している作品と捉えてポジティブに楽しんだ。

最後に日仏会館で渡辺豪の《積み上げられた本》を見たけどこれも良かった。

CGで描かれた本(本物と区別が付かない)がスクリーン一杯に映し出されているだけのシンプルな内容。と見せかけて、実際は2列に積み上げられた本のうち片方だけがフレームの下へ沈んでいくといった現実ではあり得ない動きをしたり、光源の変化によって特定の本の色付きだけが変わっていくなど、完璧に現実を模倣しきった筈の3DCGに違和感を加えるような変化が画面に現れていく。演出の意図などはあまり分からなかったものの、あえて不気味の谷を見せているかのような面白い映像だった。

恵比寿映画祭はこれで終わり。天気も良かったので、周辺をちょっとだけ散歩してから帰った。