2026/5/3(日)に開催された東京ゲームダンジョンに「tronica plays」を出展した。ブースに来てくださった皆様、ありがとうございました。
無事に終えることができたので、申し込みから当日までどんな風に過ごしていたか振り返ってみる。
なぜゲームダンジョンに参加したか
新作「tronica plays」は、奇妙な楽器を使いこなして短いワンループの楽曲を作成するゲーム。
本作はただ配布するのではなく、プレイヤーが曲をつくる様子を私が目撃することで完成すると考えていた。普段はゲームを作ってもitch.ioに公開しておしまいにすることが多かったが、イベントに参加して対面でプレイヤーに遊んでもらう機会をつくることにした。
また、ビデオゲームの多様性を感じる場としての試遊会に憧れがあった。自主制作ゲームの試遊会には10年以上訪れており、デジゲー博で初めてOculus Riftを被ったことや、特殊コントローラーのゲームに刺激を受けたことをよく覚えている。イベントに謎の作曲ゲームが参加することで、ビデオゲームの裾野を広げることに繋がればよいと考えた。
申込み
開催が2026年5月3日で、申し込み開始は2月21日。東京ゲームダンジョン12には初出展枠があり、私はこちらを利用した。過去最大の400枠での開催だったが、半日で売り切れたとのことで、油断せずに最速で申し込むのが良い。
ちなみに、出展予定のゲームはこの時点でほぼ完成していた。これに関しては自分を褒めてあげたいところで、結局この後本番までの二ヶ月間はPV作成や印刷物の用意で忙しく、開発の時間はほぼ取れなかった。
出展情報提出(キービジュアル、PV、ゲーム紹介文)
最初の一ヶ月間で、ゲームダンジョンの公式HPに掲載するゲーム情報の提出を求められる。この時点で動作するゲームが用意できていないとPVやキービジュアルの作成が難しい。やはりゲームは事前に一定の完成度まで仕上げておくと良いと思う。
私はPVもキービジュアルも使い慣れたAviUtlで作成した。Short PV冒頭のサウンドロゴはDAW(Ableton Live)で作っている。
印刷物作成(A1ポスター、A4チラシ)
一番苦戦したのが印刷物。全く経験がなく、デザインソフトと印刷サービスを決めるのに手こずった。
デザインソフトはAdobe Expressを使用。素人でもスクリーンショットとテキストをぺちぺちと貼り付けるだけで簡単に作成できる。フォントにこだわりがあり、月単位の有償サブスクにも加入した。
A4チラシ
プリントパックで印刷。マットコート110kgで200部印刷。ブースとチラシ置き場に配置。プリントパックへ依頼する前に、コンビニプリントで試し刷りしてデザインを微調整した。
A1ポスター
ソクプリで印刷。紙は半光沢。2枚印刷して、ブースとポスタースペース(有料)に掲示。
試し刷りは諦めていきなりソクプリに発注した。届いた品を見ると、ゲームのスクリーンショットを素材に使った部分が引き伸ばされてガビガビになってしまった。ただし、遠目にみると目立たないので神経質でなければそこまで気にする必要はないかも。
展示用機能の実装
アンケート
PCで特定のキーを押すと、ゲーム画面にGoogleフォームのQRコードが表示されるようにした。(展示者席側にノートPCを置き、客席には無線マウスを置くスタイルで展示した)

デモ機能
ゲームを放置 or 特定のキーを押すと、自動演奏が始まるデモ機能を実装した。展示ではゲーム画面をHDモニタに投影する予定であり、これを使って通りすがりの人の興味を惹けるようにした。
プチ試遊会
本番一ヶ月前にDiscord経由でプチ試遊会を開催した。プレイヤーにゲームのビルドを渡し、画面共有&ボイスチャットを繋ぎながら遊んでもらうというもの。口頭での補足は禁止とし、助言なしでプレイヤーが詰まらずにゲームを遊べることを確認した。
ここでのフィードバックを元に、改善点を残りの期間で修正していった。
展示スペース

HDモニタ
ゲームダンジョン運営が数量限定で貸し出しを行っており利用させて頂いた。争奪戦になるので、申し込み開始と同時に申請することをおススメ。
HDMIケーブルが付属しているが、私はMacbook Airを使用するためType-C↔HDMI変換ケーブルを持参した。
音響
Macbook Airのイヤホンジャックにイヤホン分配器を差し、ここからプレイヤーヘッドホン、スタッフ用ヘッドホン、スピーカーの3つに音声を出力した。

プレイヤーが作った音楽を堪能したいというのが展示の重要な目的のため、スタッフ用ヘッドホンでモニタリングできるエゴ丸出しな仕様にさせてもらった。
スピーカーはプレイヤー以外のギャラリーに聞いてもらうためのもので、アーケードゲームやストリートピアノのように、通りすがりの人や順番待ちの人が音楽を聞ける状況を作ろうとした。
プレイヤー側ヘッドホンは、安価で音質が良いと評判のオーディオテクニカ ATH-S100を購入。実際音は悪くなかった。ただし、お客さんの中にはキャップの上に被ろうとしたら開き幅が足りず、装着を諦めて片耳に当ててプレイする人もいた。その他にも装着を避ける人は一定数おり、ヘッドホンは万能とは言えないようだった。

インストラクションガイド
「tronica plays」は、正体不明のモノリスのような楽器の使い方をプレイヤーが手探りで発見していくことを意図したデザインになっている。楽器の使い方をゲーム内チュートリアルで説明してしまうのはネタバレに近いためそこは避けた。
その一方で、楽器のチョイスによっては、なかなか「作曲している感」に辿り着けない問題があり、これはケアが必要と感じていた。このため、ヒントが書かれたインストラクションガイドを作成して机の上に置いた。

「CHESS」は1人でメロディ、ハーモニー、リズムの3要素を表現できる万能楽器であり、まずはここから始めることでぐっとハードルが低くなる。
前述したプチ試遊会ではこのインストラクションガイドをプレイヤーに共有しており、この内容だけでワンループをつくれることを確認した。
付箋
あると便利。チラシの手前に「TAKE FREE」と書いた付箋を貼って持ち帰り可能であることをアピールするなど、補足に使用した。
他にも、プレイヤーがゲームで苦戦しているポイントを見つけたら、付箋に説明を記入してモニタ下部にペタペタ貼るようにした。即席のインストラクションガイドである。ちなみに見た目はカッコ悪い。
荷物の送付
バッグ1個に収まらない量になることが分かっていたため、躊躇なく宅配を使用した。大きめの段ボールを選んだので、丸めたA1ポスターも対角線のスペースで収納できた。
もしもの場合に備え、展示に必須であるノートPC&マウスは鞄に入れて当日持ち込んだ。
設営
9:45に会場入り。予め送っておいた荷物が会場の端に集められているので、回収して設営をスタート。
10:30に設営が完了したが、ここでUSBハブを忘れたことに気づく。
これにより、スピーカーとマルチプレイ用のゲームパッドが使えなくなってしまった。
電気屋に走ることも考えたが、11:00にイベントが始まることを考えるとまず間に合わない。終わった・・・。
(最初の1時間は一部の先行入場者しか入れない客入りの少ない時間帯なので、そこを捨てて外出する案もよぎった。しかし完全にテンパっていることを自覚していたので、今の私に適切な判断力は無いとみなしジタバタせず諦めることにした。)
絶望の表情でSNS告知を済ませる。
スタッフは私一人で、試遊台も一つ。これはイベント初参加で試遊台を2つ用意するのは大袈裟というのもあるし、プレイヤーのつくる曲をしっかり聞くために1人ずつの方が都合が良いという狙いもあった。
来場者数
ほぼ人が来ない覚悟もしていたが、結果的に37人にプレイしてもらえた。マジかよ!
試遊台が空いておらずチラシだけ取って去っていく人も多かったので、PC2台で回せばもっと多くの人に触れてもらえたと思われる。
ちなみに呼び込みやチラシ配りはしなかった。これは自分が参加者側のときに呼び込みが苦手で、むしろそのブースから離れる理由になっていたため。ゲームイベントは限られた時間でどれだけ自分にフィットするタイトルを見つけられるかの戦いであり、試遊するか否かを落ち着いて吟味できるようにしたかった。そのため、明確に自分のブースの前で立ち止まって、興味がありそうにモニタを見ている場合のみ「試遊可能です」と声がけする程度にとどめた。
ゲームへの反応
ニッチなゲームなので、目標としては10人中1人くらいが喜んでくれればOKと考えていた。実際のリアクションとしては賛否がぴったり半々という感触だった。
そもそもどうやって賛否を判断するかだが、「tronica plays」はクリアの概念がなく満足するまでプレイしてもらう形式にしたため、ゲームに乗れているかがプレイ時間に正直に出ているなと感じた。「このゲーム合わないかも…」という人は5分未満で去っていくし、逆にハマった人は15分以上遊び続けてくれた。
嬉しかったのは、無事にワンループの曲を完成させた人が多くいたことと、出来上がった曲を同伴者に聞いて欲しいとヘッドホンを渡し合う姿が見られたことだった。音楽を趣味とする人間の端くれとして、これほど尊い光景はない。
プレイ後に「音楽経験はないのですが曲が作れました!」とわざわざ感想を伝えてくれた方もいて、本当にありがたい限りだった。
また、本作はインタラクションの気持ちよさのみで成立させたシンプルなゲームのため、低年齢の子供に受け入れられる可能性を感じていたが、実際に親子で訪問していた5歳くらいのお子さんがハマって長時間遊んでくれたのには感動した。普段は別の方向性でニッチなゲームばかり作っている人間なので、雷に打たれたような衝撃があった。
チラシの減り
200枚印刷して115枚さばけた。
チラシ置き場とブースに100枚ずつ置いていたが、ブースの方がよく減っていた。次回参加するなら100枚で十分そうだが、最低発注数はいくらだっけ?
アンケート結果
来場者37人のうち20人に回答いただけた。一部項目について公開して分析する。
ブース訪問のきっかけ

「出展ブースを見て」が最多、その次が「ゲームダンジョンHP」だった。当日歩きながら面白そうなゲームを探す人が多いという結果は頼もしい。モニタを使用したこと、デモ演奏機能を実装して常にゲーム画面が見えるようにしたのは正解だった。
ゲームの評価

平均4.1という高いスコアが出ているが、わざわざアンケートに回答いただけた方はゲームを気に入ってくれた方が多いはずなので注意が必要。17人の未回答者の存在を踏まえると、やはり賛否が半々と捉えるくらいが丁度良いのかなと思う。
クリアの概念がないゲームをどう感じたか

一番気になっていたのがこの項目。目的なしに楽器と戯れるだけのゲームを楽しめる人がどれくらいいるのか心配だったが、「楽しめた」の回答数が多い。先ほど同様に未回答を考慮すると半々くらいで見ておくべきだろうか。
正式リリースされたらプレイするか

本作は極端にプリミティブなゲームで飽きやすいため、無事にリリースできたとして、どれくらいの人が再プレイしてくれるかは怪しい。結果は「プレイしたい」と「プレイしたくない」が3:1だった。なんかリアルな数字!
欲しい機能はありますか?
ここには載せないが、多数の意見を頂いた。ゲームのコンセプトに合ったアイデアは、順次実装を進めている。
出費
| 項目 | 金額(円) |
|---|---|
| ゲームダンジョンデカ枠_初参加 | 8,500 |
| レンタル(液晶モニタ/テーブルクロス/ポスタースタンド) | 3,500 |
| A4チラシ200部 | 2,340 |
| A1 ポスター2枚 | 4,240 |
| 佐川配送費(行き帰り2回) | 4,360 |
| 展示用備品(マウス、Type-C↔HDMI変換ケーブル/電源タップ3m/人数カウンタ/ヘッドホン/イヤホン分配器) | 8,620 |
| 合計 | 31,560 |
初めての展示で買うものが多く、当初の見積もりより高くついてしまった。東京在住のため交通費は省略。
得られたものを思えば決して高くない額だと思う。
ふりかえり
USBハブを忘れたのは本当に良くなかった。大反省。こういったことが無いように持ち物リストを作っていたのだが、イベントが終わって見返すとリストに記載が漏れていた。そこからミスっていたのか…。
ただし反省点はそれくらいで、心配していた集客やゲームの評判も期待以上の結果だった。やはり恐れすぎずにチャレンジするのは大事。
ニッチな内容でもお客さんが多かったのはゲームイベントの力だと捉えており、個人制作のゲームを遊びたいほどの発掘意欲の高いプレイヤーが集まっているので、試遊可能な環境さえあれば一定の来場者はあるのだと分かった。ちなみに、自分のブースは特殊音楽ゲーム島とも言える、一般的なリズムゲームの枠をはみ出てしまった作品が集まるゾーンに配置されており、お隣のブースのお客さんがうまくこちらに流れてくれた感触はあった。回遊組をキャッチできるかどうかは、同じイベントに近い立ち位置のゲームが出展されるか、それを運営がうまくグルーピングしてくれるかなど、自分の力だけではどうにもならない要素も絡んでいる気がした。
また、イベントに参加する際は、出展の目的をはっきりさせておくと良いと感じた。
前述の通り、自分は本作でプレイヤーが音楽を完成させる瞬間を目撃することを目的としており、これは大いに達成され満足した。
トイレ休憩のついでに他のブースを軽く眺めると発見が多かった。完全にノートPCの画面やSteam Deckで試遊させているブースがあるが、あれは出展者がプレイの様子を見ることができないスタイルである。ゲームを知ってもらうこと、プレイ後アンケートの収集を目的にしていると思われる(通路側に立って覗く時間もあったかもしれないが)。開発者同士?が雑談している姿も多く見られた。ゲーム開発は孤独な作業なので、近況報告など、人とコミュニケーションを取るためのオフ会としての側面も強いのだろう。
同じ空間にいてもそれぞれ微妙に目的は異なっていることを、出展者側になってようやく理解できた。解像度の変わる瞬間である。
あとがき
とにかく初出展が無事に終わって良かった〜、という気持ちで今はいっぱい。
「tronica plays」はフィードバックを参考にしながら調整中で、完了次第WEB上での無料公開を考えている。東京ゲームダンジョンへの再展示は今のところ考えていない。ただし、東京ではない、別の地域で出展してみるのには少し興味がある。田舎の出身なので、世のイベントの多くが東京ばかりで開催されるのには抵抗したいし、単純に旅行好きなので遠出したい欲も満たせるはず。
新作ゲームをつくりたい気持ちもあるが、私はビデオゲームと関係ない分野での経験を元にゲームを作るタイプなので、しばらくは何も考えずに沢山遊ぼうと思っている。ダラダラしていきましょう。