2023ビデオゲーム振り返り

振り返る。

昨年と比べるとゲームの時間をかなり確保できたはずだが、AnnoやCityies:Skylinesといったシミュレーションゲームにハマったことや、膨大なコンテンツ量を誇るAAAタイトル郡(Startfield、ゼルダ、FF16、BG3)のリリースもあり触れた作品数は少なめになった。小規模作品のプレイ率が低いのは心残りで、年末年始で気になっていたものをいくつか触ってみる予定。(特にドキュメンタリー×ビデオゲームのメイキングオブカラテカは見逃してはいけない気がする)

また、今年は謎の思い切りで音楽の勉強を始めたのも大きい出来事だった。環ROYのインタビュー記事を参考にAbleton LiveとSoundQuestで基礎を叩き込んだり、Ableton and Max Communityに参加してエンジニア的な視点で音を操作する方法を理解したりとひたすら学習の1年間だった。恐らくビデオゲームの総プレイ時間とLiveの起動時間がトントンかそれ以上というくらいだったと思う。そのおかげで音楽を聞く際の解像度が上がったのは間違いなく、偶には勇気を持ってインフラ整備の年を設けるべきだとしみじみ感じている。

プレイしたゲームは以下。

PC

  • Atomic Heart
  • Anno 1800
  • ARMORED CORE6
  • Baldur’s Gate3
  • BIOHAZARD RE:4
  • Bomb Rush Cyberfunk
  • CLIMBER sky is the limit
  • Critters for sale
  • Cityies:Skylines
  • Cityies:Skylines 2
  • Cyberpunk 2077 仮初めの自由
  • Exo One
  • FORSPOKEN
  • Green Hell
  • Hi-Fi Rush
  • HITMAN3
  • In Other Waters
  • Jusant
  • Kentucky Route Zero
  • Mirror’s Edge
  • Replica
  • Starfield
  • Street Fighter 6
  • Wo Long
  • カルタグラ FHD
  • パラノマサイト
  • ヒラヒラヒヒル
  • 違う冬の僕ら
  • 彼は私の中の少女を犯し尽くした
  • 最近の日常的不可思議 Monday Loop
  • 崩壊スターレイル

Switch

  • ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム
  • ピクミン1
  • マリオブラザーズワンダー

PS5

  • FF16
  • HUMANITY
  • テイルズオブアライズ DLC

特に印象に残ったものについてコメントする。


Kentucky Route Zero

正月休みにプレイしたゲームだが、今年ベストだった。有志翻訳を制作されたashi_yuriさんには感謝しかない。

しかし、取り上げるにしても、本作は非常に難解でありどう切り込んだらいいか悩むところではある。そこで、マジックリアリズムの世界をビデオゲームでどうしたら描けるかという視点で考えてみる。

素朴に考えると、ビデオゲームというメディアは1 or 0の世界を描くほうが本来得意であると思われる。例えばマインクラフトやティアーズオブザキングダムは、オブジェクトやボクセルといった単位で世界を捉えことに長けたビデオゲームの性質を存分に活用したタイトルだ。そこから離れて死者と生者が混ざる中間的な空間を描画するには戦略が必要である。

そこで本作が採用したのが、ビジュアルの印象的な階調表現と考える。キャラクターは表情を廃してデフォルメし、照明による影でオブジェクトのシルエットを延長して曖昧にする。更にカメラのパースペクティブと画面全体にかかるグラデーションで情報量を制御し平面的な印象に近づける。これによりキャラクターと背景の境界が曖昧になり、世界をオブジェクトの集合体ではなく絵画的に捉えられるようになる。最終的に「見えなさ」が明快に立ち上がった不思議な画面が完成する。この明快な暗闇がマジックリアリズムの世界を担保している。

本作をプレイしながら思い出していたのは『killer7』で、須田剛一作品にて生者と死者が境界無く登場するのは常だが、3Dでその世界を描くときにトゥーンシェーダーを用いた階調表現になることに衝撃があった。全てのオブジェクトが2値的に色付けされることで、明暗が強調された抽象的なビジュアルが生まれる。

『KRZ』は『killer7』の兄弟のような印象を受けると同時に違いもある。『killer7』は日本的なフラットデザインで明暗をはっきり分けて描くのに対して、『KRZ』はオブジェクトの輪郭はくっきりさせたまま照明や霧だけに柔らかいグラデーションをかける。画面の階調をアナライザーにかけたとき、前者が特定の値のみが飛び出した鋭角な形になるのに対して、後者はそれをやすりにかけたような丸みが現れる。そこにカメラワークが加わることで、『killer7』は操作しているキャラクターすら生者か死者か分からないような印象を、『KRZ』は生者と死者が霧の中で共存する世界を眺めるような印象を与えてくれる。

ヒラヒラヒヒル

昨年取り上げた『BLACK SHEEP TOWN』に続き、2年連続でリリースされた瀬戸口廉也ディレクション作品。

瀬戸口廉也は同じ的に向かって球を投げ続けている作家という印象が強いが、本作は『BST』以上にその距離を縮めている。

初ディレクション作品である『SWAN SONG』の冒頭では、大地震発生直後の街を放浪していた主人公が建物の下敷きとなった女性に自閉症の妹の保護を依頼されるも、突如「妹はこの場で死なせてあげたほうが良いかもしれない」と撤回し事切れるという暗いシーンがある。あえて倫理的に問題のある描写だと言わせてもらうが、人間が間違った想像力で他者を判定する瞬間を瀬戸口廉也は描き続ける。

『ヒラヒラヒラル』は一見、ANIPLEX.EXEによるパブリッシュということで上品な仕上がりに見えなくもないが、瀬戸口廉也作品を追ってきた人ほど食らう毒が仕込まれている。本作は架空の疾病である「風爛症」が存在する大正時代を描いたフィクションだが、冒頭で意思喪失したかのようにみえる「風爛症」患者の殺害の是非を問う選択肢がプレイヤーに提示される。『SWAN SONG』の主人公は迷わず自閉症の少女を避難所へ連れて行ったが、『ヒラヒラヒラル』ではプレイヤーが危険なジャッジを下せる瞬間があえて設けられている。気分の良いものではないが、本作をプレイするなら間違った方の選択肢を選んだ際に何が起きるかは見ておいて欲しい。

Baldur’s Gate3

自分はデジタルゲーム上で再現されたTRPG的体験というものに興味があって、ソウルシリーズの非対称マルチプレイとTRPGの関係について考えたり『Outward』を全編マルチプレイで遊んだ話などをこのブログに書いてきた。

その視点でいうと、『バルダーズゲート3』はTRPGの影響下にあることを自ら売りにしている訳で、こちらから読みに行く楽しさはないものの、その精度の高さに歓喜してしまう。ここまで詰めた作品は10年お目にかかれないだろうなと思い、ボイスチャットを繋いで全編マルチプレイで少しずつ進めている。

マルチプレイのTIPSとして、オプションで「自動で仲間の会話に聞き耳を立てる」を有効にするといい感じですよ。偶に聞かれたくない会話を聞かれますが。

FORSPOKEN

世間の評判通り失敗作であることに同意するが、今回はそこは深掘りしない。

自分が本作で気になったのは、ユーロトラックシミュレータ2やノーモアヒーローズといった作品が持つ、ダラダラとした地方生活の時間感覚がFFにミックスされることで、『葬送のフリーレン』のように全てが終わった後のRPGを描ける可能性があったのではないかということだ。

ルミナス作品が面白いのはオープンワールドと『FF』のギャップがもたらすシュールさで、『FF15』はメインストーリーを進めずに仲間と寄り道をすればするほど味が出るというモラトリアムな体験が良かった。

『フォースポークン』がどうだったかというと、世界は既に崩壊しており、荒野とモンスターしかいない風景の中を主人公が全能感たっぷりのパルクールアクションで駆け抜けるビジュアルが異様で良かった。有り余った力を発散させる目標が無く、スタイリッシュの無駄使いである。

『葬送のフリーレン』で稀代の魔術師としての才能を持つはずのフリーレンを生活者として描くようなセンスが『フォースポークン』にもあればよかったが、残念ながらそうはならなかった。地形とプレイヤーの関係の作り込みもあっさりとしたもので、『ETS2』や『デスストランディング』のように永遠とアクション部分のみを楽しむような遊び方をするのも難しい。それでもSWERYのような高い編集センスを持つスタッフがいればカルト作品として化けたのではないか?とつい考え込んでしまう惜しい作品だった。

Bomb Rush Cyberfunk

今年のベストオブコンサバティブ。あまりに『JSR』に忠実であるが故に語りたい部分も少ないが、マニュアルコンボシステムの導入により、『skate』シリーズのように広大なフィールドをだらだら散歩しながらトリックを繋げていく楽しさが増えている。

年末にはセガ公式の『JSR』リメイクも発表されたが、トレーラーを見るにガラケーが存在する時代の渋谷をまだ続けようとしていることに強い不安を感じます。


以上。

わざわざ取り上げなかったものの、『ティアーズオブザキングダム』は前作が肌に合わなかった自分にも刺さる作品に仕上がっていて、多くのプレイ時間を割いてしまった。(アレルギーになっていた塔登りが削除されたのは本当に良かった)

AAA作品の中では順当に『TotK』と『SF6』の2本が今年のベストだったと思う。

一方、『FF14』好きの自分としては『FF16』が残念な仕上がりになっていたのはショックだった。ちなみに松野泰己的なことをやろうとして滑るのは『FF14』の頃からそうで、そこから完全に離脱した『漆黒のヴィランズ』以降が良作と自分は捉えている。あと、『FF14』で名シナリオを生み出してきた石川夏子氏が16チームへリリースされなかったのも関係していそう。

2024年はせせきさんの山ゲームに期待しています。