今年はいきなり能登半島地震が起きるなど不穏な空気が漂っていたが、自分の身にも碌でもないことが多々起きた。(ここからゲームとまるで関係ない話が続く)
まず生活が大きく変化した訳でもないのに過労でダウンしたのが痛かった。諸症状の原因究明のため人生で初めてMRIをくぐりながら、自分が身体の弱い側の人間であることを受け入れるという悲しい儀式があった。その意味で年末に出たtofubeatsの体調不良語りの記事は勇気をもらえた。私も毎日ヤクルトを飲むか…。
また、以前から兆候はあったがツイッターの投稿が全くできなくなった。別にメンタルが落ち込んでいるのではなくて、あの場に書き込みたいと思える言葉が思いつかなくなった。代わりに生活ブログの更新が捗るようになったが、こんな辺鄙な場所を見に来る人などいるわけもなく、事実上の壁打ちである。ただでさえ人前に出ない人間なのに、ネットですら発信しなくなったら今後どうなるんだろうと心配になるが、今のところは静かに日々を過ごしている。
ようやくゲームの話題に戻ると、小規模チームから光る作品がいくつも出ていて充実した年だったと思う。逆に大規模スタジオは・・・ということで本編に入っていく。
プレイしたゲームは以下。
PC
- ANNO 1800
- All You Need To Do/minjee0129
- Baludur’s Gate 3
- BIOHAZARD RE:2
- CARS
- ELDEN RING DLC
- FF14 7.0 黄金の遺産
- Five Years Old Memories/小光
- Ghost Coin/Ghostbutter
- Gray Zone Warfare
- Hyper Light Drifter
- individualism in the dead-internet age: an anti-big tech asset flip shovelware r̶a̶n̶t̶ manifesto/alienmelon
- Just Cause4
- Lethal Company
- The Making of KARATEKA
- mario & luigi 2.5/GURN GROUP
- Metals Hug/Miramar
- microwave simulator
- MUSICUS!
- Neon White
- Pacific Drive
- PARQUET
- Path of Exile 2
- Pizza Tower
- SIGNALS
- Shiny Shores/ayucinna,thuleanx
- SYNDUALITY Echo of Ada (Test)
- TUNIC
- WHITE ALBUM 2
- Why do you love me?
- you’re just imagining it
- 140
- 1203℃/Nomary
- 9-nine-
- 祇:Path of the Goddess
- アニマ・アルプス
- サイレントヒル2
- ぬきたし1+2
- ふりかけスペイシー
- メタファー
- 臭作
- 野狗子
- 未来都市の氾濫
Switch
- 岩倉アリア
- ファミコン探偵倶楽部 笑み男
PS5
- FF7 リバース
- アストロボット
- サイレントヒル: ザ ショートメッセージ
iPhone
- 学園アイドルマスター
ブラウザ
- SILENT HILL: Ascension
特に印象に残ったものについてコメントする。
アニマ・アルプス
昨年の記事でも触れた、せせきさんの新しい山ゲームが(体験版ではあるものの)無事にリリースされた。しかも素晴らしい仕上がりで夢中でやり込んでしまった。
近年、スタートアップ企業的な思想を内面化したゲーム開発者が増えていく中で、せせきさんは良き開発者のお手本として、自分の中での存在感が年々増してきている。山屋の経験が生んだ美的感覚をゲームに込めるスタイルは顕在で、自身の内側から湧き出る興味に真摯に向き合うことがユニークなゲームを生み出すための最善手なのだともう一度信じさせてくれる。
前作「孤高のアオイロ」は自分に大きな衝撃を与えたが、キャラクター要素やパズルアクション要素など、日本の同人ゲームにありがちなフックを用意したことが「山」というテーマと合わないように感じられた(余談だがその思いが私に「Climb」というゲームを作らせた)。では「アニマ・アルプス」がどうだったかというと、素材をクラフトして梯子や休憩所を作りながら山を攻略していくという、プレイヤーが山と1対1で向き合うゲームデザインが採用されており、最高のアンサーが返ってきた気分だった。
ちなみに最初の岸壁を踏破したときのマップがこんな感じ。この梯子を掛けるのに1週間分の可処分時間を捧げました。
Five Years Old Memories
1月にICCで出会った作品。東京藝術大学ゲーム学科を追っていた人ならご存知であろう「here AND there」の小光さんの新作。
タブレットでプレイする作品で、作家が知人から集めた5歳児の頃の記憶がゲームの中に再現されている。目的が曖昧な行為をやらされることで、鑑賞者にインタラクションそのものを楽しませるというアートゲームの王道を行っている。前作から切れ味がぐっと上がっていて頼もしく感じた。
ICCでは靴を脱いで上がる部屋でクッションに座りながらプレイできた。壁にゲームにまつわる小品が展示されているなど、インスタレーション的な演出が加わっていてより楽しむことができた。
祇:Path of the Goddess
「深世海 Into the Depths」を手がけた川田脩壱ディレクターの新作。「選択と集中」により減ってしまったカプコンの「AAAでは無い枠」の作品になる。
和風ゲームは桝田省治作品や大神といった名作があるが、本作がそれらと異なるのは、テキストを極端に廃してゲームメカニクスとアートスタイルを研ぎ澄ましていること。「ピクミン」とスラッシュアクションをハーフにしたようなストラテジーを通して、全体の利益のために個を犠牲にする人身供養の世界観がダイレクトに伝わってくる。
主人公や村人らが仮面で素顔を隠しているのに対して、唯一顔をさらしている巫女が祓いの儀式のために体を侵されていく展開は、大変居心地が悪いと同時にアートスタイルと一致しており説得力がある。
余談だが、私はゲームの中の食事シーンが好きな人間で、本作にも和菓子を収集する要素がある。作成した和菓子は巫女が口にするのだが、あくまで神への献上品を代理で頂いているという形式なのがひどく切なかった。
学園アイドルマスター
ずっと待ち望んでいた、育成パート有り&最先端のビジュアルという、1番好きなスタイルのアイマスが帰ってきた。数えてみるとアイマス2以来なので10年ぶりということになる。恐ろしい…。
アイマス2の密かに好きだった点として、一週目でアイドルをトップアイドルに導くことは実質不可能で、周回してステータスを底上げするアクセサリーを集めることでクリアが現実的になっていくという仕様がある。一見アンフェアに見えるが、この仕様のおかげでどのプレイヤーも挫折→成長→達成という物語を知らない内に体験させられるチューニングになっている。STGのような競技性の強いゲームでこういう調整はして欲しくないが、キャラクターゲームであるアイマスではアリだなと当時感心した覚えがある。
あれからしばらく経ってリトライを前提としたローグライトが流行るようになった。学マスも同様に P Lvを上げないとまともなデッキ構築ができないバランスだが、今回もやはり許せてしまった。
岩倉アリア
のめり込んでしまい、気づけば3日でクリアしていた…。
話題になった通り良質なシスターフッド作品なのだけれど、プレイ中ずっと警戒させられたのが、主人公らに「ビッグ・アイズ」なデザインが採用されていること。つまり親愛の眼差しが少女のみに限定するような思想が隠れているならば、むしろ私の思うシスターフッドとは違う方を向いており、もしそうなら途中で放り出そうと考えていた(バッドエンドに入る選択肢を選ぶと彼女らの悲惨な晩年が描かれる演出も同じ理由で危ういと感じていた)。だからこそ、ラストに本作唯一の成人女性である吉野明里さんの反撃がきちんと置かれていたのはスカッとした。
9-nine-
かずきふみシナリオのADV。色々関心することが多かった。
昨今の打越作品をプレイしていると、もはやゲームとプレイヤーの関係を使ったギミックを仕込むことは只のマナーでしかなく、本当の魅力は別に確保しているなと感じることが多い。「9」もフローチャートの存在をキャラクターが認知し始めるメタな展開があるものの、プレイヤーに分岐の森を自分で歩かせるようなことはさせず、まるでゲーム原作のアニメを見ているかのように映像的に処理するクレバーさに関心した。あくまで本作の核はジョジョ4部のようなニュータウンを舞台にした能力者バトルをADVのシステム上で表現することにあり、テンポを落とす要素は真っ先にオミットしたのだと思う。フローチャートを見ながら作戦会議する絵が出せただけで十分なのである。
実は大ネタ以外の日常芝居も良く、小気味よいSEと共に自転車で登場して「かばん籠に入れな!」と声をかけてくれる九条さんの魅力には素直にやられてしまった。
以上。
実は2024年は注目していたAAA作品が一斉に発売される年だったのだが、どれも今一つで終わったのには落胆した。
まず初めにBokeh Game Studioの「野狗子」。
私は外山さんのファンで過去にも「外山圭一郎とメディアアート」という記事を書いている。外山作品をどう見ているかはこちらを見て貰えば分かるとして、本作はメディアアート的な手つきでゲームメカニクスを作る裏コンセプトの部分が過去作と比較して弱すぎると感じた。
例えば野狗子探しのシークエンスは、属性の違う人間を大衆が疎外することのメタファーと解釈することができる。しかし、命を使い捨てにする憑依バトルが投入されることで焦点がズレる。憑依というメカニクスを応用して多用なシチュエーションを生むことが、”長く遊べる”ゲームとしてのクオリティを担保する一方で、作品のコアが何なのか分かり辛くなっていく。この散漫さを「ユニーク」と評すのは私には出来ないと感じた。
もう一つの新規IPとして「メタファー」もあったが、こちらはペルソナと同じくスケジュールシステムを採用している時点で新しいものを作ろうという気概がそもそもない。
こうしてみると、独立一本目で「デス・ストランディング」を出してくる小島監督は凄かったんだなと思い知らされる。
また、今年は「メタファー」や「FF14 7.0 黄金の遺産」など、選挙を題材としたJRPGが同時に出現するという興味深い現象があった。しかし、両作ともその踏み込みは浅く消化不良だった。トランプの当選による選挙というシステムへの懐疑や、安倍総理の暗殺、ロシア・ウクライナ戦争などを思わせるモチーフが仕込まれているなど、近年稀に見る緊張感の高いゲームとして完成する可能性があったのにも関わらず、それらの要素も結局はJRPG的なクリシェの中に納まるよう安全に編集されていて、何が言いたかったのかさっぱり分からない作品になっていた。
こう大作に時間を割くもパッとしない印象で終わることが続くと「国内AAAはもういいかな」という気分になってくるが、唯一の救いが「サイレントヒル2」だった。特にオーディオデザインが優れているのには意表を突かれた。(でも開発はBloober Teamなので実質インディーでは…)
最近は年末に購入した「Path of Exile 2」が楽しく、しばらくは難しいことを考えずにダンジョン潜りに勤しもうと思います。
2025年に期待のゲームは、珍しく何も思い浮かばないので探索の年にします。