2013年も残り僅か。というわけで私的GOTY記事です。PC、コンシューマ、スマートフォン、アーケードごちゃ混ぜでオススメしたいお気に入りのタイトルを選出しました。また最後には個人的な趣味で選んだ3つの作品をランキング形式で紹介します。プレイしたゲームのリストはこちらでご覧下さい。紹介している作品の中にはウィンターセールで安くなっているものやフリーで公開されているものも多いので、年末年始のお供にどうでしょうか。
Don’t Look Back
あのSuper Hexagonの開発者であるTerry Cavanaghの作品で、過去にwebで公開されていたもののiOS移植版。左右上下移動と小銃攻撃だけで完結する操作やピクセルで描かれたグラフィックなど全体的にシンプルな表現方法が選ばれており、それゆえ陰鬱な世界とストーリーが強く響きます。クリアに必要なプレイ時間も短く、サクッと良質なゲームを楽しみたいという方にオススメ。この画像にピンときたらとりあえず触ってみてはいかがでしょうか。フリーで公開されているので気になった方はweb版を今すぐどうぞ(こちら)。VVVVVVのVVVVVVita版も待ってます。
rain
rainはSCE開発のPS3向けDL専用タイトルで、カラダが透明になったことで雨を通すことでのみ視認される主人公を操り雨の降る街を進んでいくアクションアドベンチャーです。少女と共に進むという設定からはICOを連想させられますが、実際にプレイしてみるとアウターワールドの思い出が蘇りました。女の子はICOのヨルダのような守られる存在では無くこの街に迷い込んだもう一人の人間として協力し合う存在であり、そんな二人の関係が丁寧な導線によって演出されます(ただし丁寧過ぎて序盤は退屈になりがちだったりするのですが)。恐らく雰囲気ゲーとしての魅力を期待すると少し物足りない内容だと思います。AIパートナーをテーマにしたゲームは多くありますが、本作の魅力はそこにあるのです。
Brothers: a Tale of Two Sons
rainと同じく本作も二人のキャラクターが協力するタイプのゲームです。本作は主人公の兄弟が病気の父親を救うために万能の水を求め冒険に出るというストーリーで、コントローラーの右スティックで弟、左スティックで兄を操作するパズルアクションになっています。兄と弟それぞれ出来る事と出来ないことがあり、二人を適切に動かすことで数々の障害を乗り越えていきます。パズルは少し観察すればすぐに解ける程度の難易度にすることで、二人が協力し合って冒険が進んでいる感覚を自然に感じることが出来ます。ファンタジーな世界観ながら残酷さを含んでいる点も気に入っていて、そんな世界を兄弟が知る過程がより冒険を冒険足らしめることに機能しているよう感じます。兄と弟の違いはパズルを解くための役割としてのものだけでは無く、様々なオブジェクトに対してのリアクションの違いがゲーム世界をより深く感じさせます。
▲闘いに敗れた巨人の血が水に流され運ばれていく。
BioShock Infinite
初代BioShockのKen Levineを再び向かえて制作された正統続編であるBioShock Infinite。BioShockは思い入れのある作品でしたので今作には期待を寄せていました。しかしいざプレイしてみると、流れるように物語を体験させることを重点としたシステム変更が上手く機能しておらず、全体的に面白みが薄くなってしまったように感じました。世間では評価の高いストーリーもアメリカ人としての視点が求められる内容で感情移入し辛く、純粋に楽しむことが出来ませんでした。それでも特筆すべきはパートナーと共に行動するエリザベスの存在です。イベントシーンでの動きや台詞は勿論ですが、ゲーム内で出会うあらゆるオブジェクトにリアクションする彼女を見ることでプレイヤーはこの世界での出来事をより自然な形で自分自身の体験として受け入れることが出来ます。エリザベスは主人公に出会うまで空中都市の権力者により塔に囚われていたという設定を持っており、それもこの辺りに効いています。これはJRPGでもよく用いられる手法ですが、3D空間を一人称視点で観察するという現実により近い、ゲームとしてのお約束表現が少ないFPSシステムのゲームで使われることでより効果的になります。戦闘中もアイテムを投げたり特殊能力ティアによるギミックの具現化などでプレイヤーの手助けをしてくれます。彼女はこのゲームのストーリーテラーと戦闘時のパートナーを両方こなしているわけです。初代BioShockは主人公の前設定を出来るだけ排除しプレイヤーとのズレを最小限に抑えることが重要視されたタイトルでしたが、本作は他人であるブッカーを主人公とする三人称の物語をプレイヤー自身の物語として見せることを目指しています。その創意工夫はザナルカンドから別世界へやってきたプレイヤーと限りなくイコールな存在である主人公ティーダがヒロインユウナの居る世界を救うRPGであるFF10の作り込みをアメリカのゲーム文化側から行っているかのようで、そんな本作は三人称視点の物語に特化したゲームをプレイして育った日本人であり、同様に洋ゲーも愛してきたゲーマーからすれば、ご褒美とも言える特別なタイトルであるわけです。
▲綿菓子を貰うエリザベス。プレイヤーが見ていなかろうと彼女は忙しい。
以上パートナーがテーマのゲーム3連続でした。
フェアルーン
スキップモア開発のスマートフォン向けアクションRPGで、ハイドライド、ゼルダの伝説のように探索と謎解きを繰り返すタイプのゲームです。本作の特徴としてスマートフォンで快適にプレイさせるための徹底的なチューニングが挙げられます。まず戦闘ですが、攻撃ボタンなどは存在せず敵にぶつかるだけでプレイヤーとの間で互いのステータスに応じたHPのやり取りが行われます。バーチャルパッドは画面と分離した形で置かれており、指で画面が隠れて見えなくなるようなことは起きません。ゲーム進行もテンポよく進んでいくように設計されていて、じっくり腰を据えなくとも電車での移動時間など生活の隙間でサクッと楽しめるようになっています。単純にこのジャンルのゲームとして恐るべき完成度を誇っているうえに誰でも楽しめる癖の無い作りで、今までプレイしてきたスマートフォンのアプリの中でも間違いなくトップクラスの内容になっています。スマートフォンでも面白いゲームがあることは認めるけどゲーム機でのプレイ体験にはどうしても劣るよね、という方にも是非オススメしたい作品です。本作はiOS版とAndroid版の両方が公開されておりどちらも無料です。スキップモア作品ではスマートフォンに特化した脱出ゲームであるピクセルルームもオススメしておきます。
Groove Coaster
iOS向けの買い切りタイプの音楽ゲームとして登場したグルーブコースター。その後好評につき曲追加式のZEROが登場し、先月にはとうとうアーケード版が稼働開始しました。シビアな入力を求められるタイプのものとは方向性が違い、曲に合わせて目まぐるしく変化する画面の情報が入力タイミングを補完するようになっているのが面白いです。また叩くタイミングが表示されないアドリブポイントが存在し、これを探していく楽しみもあります。ガチなプレイを強要されないので電車で暇な時によく触ってました。AC版が登場すると聞いた時はタッチとフリックのみだったゲームを一体どうする気なんだ…と思いましたが、巨大画面とボタン付きレバーと真っ当に進化したようです。対戦モードでは相手のアイコンがレースゲーム風に追いかけてくる演出が熱い。アドリブで差を付けて勝利せよ。
Gravity
ゲームプログラマNao_uさんが映画「Gravity」に衝撃を受け作成した宇宙遊泳体験アプリ。UnityのAsset Storeで配布されていたアセットを組み合わせて短時間で完成させたそうですが、物理演算で表現された重力の無い世界は非常にリアリティがあります。プレイヤーは有人機動ユニットの移動噴射を用いて自由な宇宙遊泳が可能ですが、この操作が非常に難しいです。因みにウィキペディアによるとこのユニットの使用は実用的では無いとされ船外活動は宇宙ステーションのロボットアームに身体を固定して行われるようになったそうですが、なんだかその理由が分かるような気がします。ステーションに接触して反動の受け方を確かめたり、遠くに見えるスペースシャトルを目指して移動噴射してみるなどして存分に宇宙空間に楽しんで下さい。リンクはこちらから。
ではここからランキングへ。
3位 Skullgirls
公式曰く「クールデコ」な世界観を持つチーム制格闘ゲーム。海外アニメが好き人ならばこのキャラデザにはグッと来るものがあるはず。家のテレビでカートゥーンネットワークが見れる環境で育ったため、周りがNARUTOの話をする中パワーパフガールズにハマる幼少期を過ごした人間としては一周して帰ってきたような感覚です。海外産の格闘ゲームとしては緻密な作り込みで完成度が高く、手触りもカプコンのMVCシリーズに似ていて日本人でも違和感なく楽しめます。またスタッフの趣味なのか、日本のアニメやゲームの影響が至る所に見られます。因みにBGM担当があの山根ミチルだったりします。
▲恐らく日本語版でなくともこの仕様。それがスカルガールズ。
EVO2013のメイン競技のユーザー投票枠にスマブラDXに次いでの2位に選ばれたり、日本でもNESiCAxLiveで配信されるなど世間の評価も高いです。更にはDLCキャラクターを追加するクラウドファンディングも成功し絶好調でしたが、コンシューマ版のパブリッシャーであるコナミとの連絡が取れなくなりパッチが配信できない状況に陥り契約破棄が決定。ようやく1月に新パブリッシャーから最新バージョンのスカルガールズが配信できる目処が立ちましたが今度は日本でのパブリッシャーであるサイバーフロントが経営の悪化により解散し再び不安な状況に。どうかスカルガールズに明るい未来を。
2位 La-Mulana
自分の良いゲームの判断基準の一つに「そこに居るだけで楽しいかどうか」というのがあるのですが、これを久々に満たしてしてくれたタイトルです。ラ・ムラーナは考古学者ルエミーザ・小杉博士を操作し遺跡の謎を解く探索アクションゲーム。そして公式PVでも強調されるほど高難易度の死にゲーでもあります。そのくせに経験値を集めて体力の上限を上げられるRPG要素や、異様に値段が高い上に使い切りだが高威力な拳銃の存在など、心を折られながらも誰でも進められるような配慮がされているのがなかなかニクいです。高い精度の動きを要求される場面もありますが、繰り返しの挑戦でなんとか突破していける程度に抑えられています。このあたりの絶妙なチューニングはデモンズソウルを思い出させます。どちらかと言えばアクションよりも謎解きで詰まる場面のほうが多く、探索しながら頭を捻って考えることの方が重要です。遺跡のマップ構造と主人公の動き(特殊なジャンプ中挙動など)がしっかりと結び付けられて作られているところにもこだわりが見え、よくネタにされる少しの段差から落ちると死んでしまうスペランカーの弱さが洞窟探検の感覚の再現だったように、遺跡を探索する感覚が制作側の意図したとおりに上手く再現されているように思えます。インディーゲームとしてはかなりのボリュームがあり、心ゆくまで遺跡探検を楽しむことが出来ます。本作の発売日は去年だったりしますが、steam版の配信が今年の4月ということで許して下さい。
▲ワクワク感がぶっ続く。(※ただし個人差があります)
1位ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル
1位に選んだのは今まで紹介してきた中でも特に僕の嗜好が反映されているだろうタイトル、ジョジョの奇妙な冒険オールスターバトルです。本作の開発担当であるCC2は高い品質のキャラクターゲームを開発することで有名です。その中でも特にナルティメットストーム2は僕にとって思い入れのある作品で、ストーリーモードのサスケ対イタチ戦は対戦ゲームであるにも関わらず、アンチャーテッドのような海外のAAAタイトルがやっている映画の中の世界に自分が入り込んだように感じる演出に十分に勝負できていると思える程の出来の良さでした。しかしネットワーク対戦では本作が目指したアクションの楽しさを無視したような勝つことだけを優先した戦法が目立ち殺伐とした空気が漂っていました。そんなCC2の最新作である本作は対戦システムが格闘ゲームに近いものになったことでついにキャラクターゲームでありながらネットワーク対戦に耐えるゲームシステムを得ることに成功しました。CC2がこれまで培ってきた能力を存分に活かし通常攻撃や必殺技その一つ一つが超高密度のアニメーションで作られており、上手くキャラクターを動かせた時の快楽はひとしおです。更に相手の攻撃を直前にガードすることで一瞬の時間停止と共に硬直が破棄され反撃が出来るスタイリッシュムーブシステムが読み合いを白熱させます(ストⅢのブッロキングとは異なり時間停止のおかげで誰でも反撃できるのがポイント)。原作ファンに楽しんでもらうためのサービスが散りばめられていることで格闘ゲームとしては初心者向けのシステムに仕上がり、非常に居心地の良い空間が出来上がっています。そんなわけで発売からしばらくたった今でも楽しく遊び続けていて、総プレイ時間はそろそろ180時間を超えます。ナルティメットストームのモヤモヤを思い出すと、こうしてオンライン対戦が楽しめるゲームがCC2から登場したことが本当に感慨深いです。発売当初は対戦バランスの悪さが指摘されていましたがプレイヤーに叩かれながらも度重なるアップデートを経たことで改善され今では対戦ツールとして十分なレベルになっていると思います。ソーシャルゲームのスタミナ制度を用いたキャンペーンモードやテキストばかりのストーリーモードも話題になっていましたが、それは本作が対戦に特化した作りになっているためにやむを得なく切り捨てた部分で大きな欠点では無いと考えています。もし続編の制作が決定すればきっと原作の名場面を再現するストーリーモードが追加され誰でも楽しめる作品になることでしょう。本作は以前に長めのレビュー記事を書いているので興味のある方はそちらもご覧下さい(リンク)。
▲「隣の世界」をワンカットで説明してしまうこの表現力。洗練され尽くしています。
以上、2013年のベストゲーム達でした。まだ十分にプレイ出来ていないため今回は外しましたが、死んだゲームのキャラクターが安息を求めてメモリを彷徨うcontinue?9876543210や、2Dアクションゲームと思いきや実は3DなFezからも良作の気配を感じました。それでは皆さん、良いお年を。
▲不要なデータはガベージコレクションによってメモリから解放される運命にある
▲ピクセルアートの中を冒険する。美しい世界をありがとう、フィル・フィッシュ。