20200322 和光

蓮沼執太 “BELLS”

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この日は銀座の和光へ蓮沼執太のインスタレーションを見に行った。告知がほとんど無くひっそりと行われていたが、蓮沼執太の野外展示の中でもぶっちぎりで面白かった。

和光といえば初代ゴジラでも破壊された銀座のシンボル。当時、無断で使用された和光側が東宝に抗議を申し入れるといういざこざもあったらしい。ちなみにシン・ゴジラでも実は破壊されており、内閣総辞職ビームの巻き沿いで横なぎにされた。和解の象徴と言えるでしょう。

和光では15分ごとに鐘が鳴らされていて、今回の作品はそれに合わせて蓮沼執太の作曲した音楽が流れるというもの。ウィンドウディスプレイには武蔵淳による時計をイメージしたデザインが施されおり、こっそり展示についての説明もある。

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この作品が面白いのは、その鐘の音をレコーディングして使っていること。つまり本来はきっかり毎時15分を告げる役割を持つ筈の音が不定期に鳴り続けることになる。これは実際に体験するとかなり奇妙な感覚で、この場所を通り過ぎる人が「何これ?」という表情で音のする方向をちらっと見るのを見かけた。解説文には「その鐘の『サウンド』を使った音楽が街に広がることによって、日常を曖昧にし、人々が持つ異なる時間軸を現前させます。」とある。つまり、日常の象徴である鐘の音をずらした鳴らし方をさせることで、もはや当たり前の風景として見逃している交差点を行き交う多様な人々へ改めて意識を向けさせることが狙いなのだと思う。

蓮沼執太は美術館やギャラリーの中で狙いをもって音楽を鳴らすということはこれまでもやってきたけれど、この作品は銀座の和光という場所でしか成立しないものであるし、またリサーチを重要視する彼のスタイルとも一致していてとても面白かった。

A10で交差点の音も拾ってきたので以下に公開しておきます。