ミニマップを見つめるとき

2020年の年末はずっと『Cyberpunk2077』をプレイしていたのだけど、『GTA』シリーズの様な既存の都市型オープンワールドのメカニクスをそのまま引き継いだ作りであることに悪い意味で驚いた。何が不満なのかというと、メニューから進行したいミッションを選択してから開始地点に辿り着くまでの移動の間、じっとミニマップを見つめることになるあの時間が嫌いだ。執拗に作り込まれたナイトシティの景色を楽しみたいのにそうさせてくれない。情報が氾濫するサイバーパンクという題材も、オープンワールドの中でプレイヤーをどう歩かせるのかに効いてくるのだろうと発売前は想像していたが裏切られてしまった。

振り返ると、初めてミニマップに悩まされたのはずっと昔の『メタルギアソリッド1』だった。それからしばらくして、多くのAAAタイトルがオープンワールドを採用するなかでまた目に付く機会が増えた。

ミニマップの在り方にどうこう言いたいわけじゃない。ただ、ゲームメカニクスに対して直感的に違和感があったときに、ミニマップが主張してくるという形でそれが表面化するケースがあり、自分の中の何に引っかかったのかについてだけ興味がある。

そこで、自分の主観で過去に気になった作品をいくつか挙げて分析してみた。先にあらすじを言ってしまうと、3D空間を最大限に活かしたゲームメカニクスとは何か?という話になっていく。(個人的な興味に基づいた文章なので、何もなくてもがっかりしないよう。)

『メタルギアソリッド』ソリトンレーダー問題

ステルスゲームであるメタルギアシリーズは、2Dゲームの『メタルギア』『メタルギア2』から始まっている。上記の動画の通り、画面スクロールを採用していないこれらの作品では、プレイヤーは現在いるエリアの全体を一画面で全て見渡すことが出来た。プレイヤーは素直にメイン画面に映っている敵の位置のみに注目して、その視界に入らないように進んでいけば見つかることはない。注意しなければならないのは次のエリアに進む際で、画面が切り替わった瞬間に敵の目の前に飛び出してしまい発見されるという事故が起こるときがある。これを回避するために画面右上のミニマップが存在し、次のエリアに存在する敵の位置や移動方向を予め把握することができる。この時点ではミニマップはあくまで補助的な役割に収まっている。

しかし、3Dゲームとなった『メタルギアソリッド』ではある問題が発生している。画面スクロールを採用した本作は、メイン画面に表示される領域が非常に狭い。カメラの状態によっては、まだメイン画面に映っていない敵に発見されてしまうという理不尽な事態が発生する。このため前作同様に画面右上のミニマップ(ソリトンレーダー)で敵の位置を確認することが重要になる。しかし、本作は画面が常時スクロールするため、エリアの切り替わりのタイミングのみミニマップを見ればよかった前作と異なり、移動時は常にミニマップを見つめ続けなければならなくなっている。目玉であったはずの3Dモデルで描かれた世界は、むしろミニマップから得られない詳細な情報を知りたいときに覗き見する画面と化していた。この問題は意外と根が深く、『MGS2』や『MGS3』でも改善しきれていなかったと思う。

初めて明確な対策を打ち出せたのが、PSPで発売された『メタルギアソリッド ポータブル・オプス(以降、MPO)』だ。俯瞰視点から肩越し視点に切り替わった本作では、カメラに映らない敵を確認することが出来ない。扉の向こうに居る敵、曲がり角の先にいる敵、プレイヤーの後ろにいる敵等々。そこで周囲の音を可視化するサラウンドインジケータが活躍する。この円形のレーダーは、ざっくりと敵のいる距離と方向だけを教えてくれる。”ざっくり”という部分が重要で、サラウンドインジケーターは敵の気配しか伝えてくれないので、最後はプレイヤーの目で確認する必要が出てくる。これによりメイン画面がミニマップに奉仕するという逆転現象を防ぐことに成功している。この調和のとれた『MPO』は、ナンバリングの付かない外伝作品ながらも、自分の中で強く印象に残っているタイトルだ。

ここで一つの反論として、これは問題などではなく、ソリトンレーダーというガジェットを使いこなすことで通常では不可能な任務を遂行してみせるスパイのロールプレイとしての演出なのだと言い切ってしまうこともできると思う。それに、カメラを自由に動かせることはメリットばかりではなく、制作側が意図した絵を見せることが出来なくなるという面もある。『MGS1』の2Dと3Dがハーフになった構成はその点でいいとこ取りであり、今だからこそ評価できる部分すらあると思う。

では何故『MGS1』を取り上げたんだよとなってしまうが、要はこのゲームが3Dらしい3Dゲームとして最適化されていないことが、当時の自分は気に食わなかったのだ。

そもそも小島監督はADV出身であり、ビデオゲームの中で実現できる物語表現に興味があるのであって、ステルス要素はアクションゲームという土俵の中でプレイヤーにストーリーを体験させる装置として利用していただけなのだと思う。MGSシリーズが3Dを活かす方向へ移行するのに時間がかかったのは、カメラワークが消える事でアクションアドベンチャーの”アドベンチャー”部分の演出がやりにくくなってしまう事への小島監督の抵抗だったのかもしれない。今思うと、3Dらしいメタルギアが遊びたかった自分はその間で板ばさみにされていたのだ。

『Cyberpunk2077』都市型オープンワールドの移動

次は『Cyberpunk2077』について。本作は『GTA』シリーズのような伝統的な都市型オープンワールドを採用している。縦に情報が詰め込まれたナイトシティの景観は圧巻だが、序文で述べた通り、目的地へ移動する間は経路を間違えないようにミニマップを確認し続けなければならない。上記の動画はミッションの開始地点まで移動する様子をキャプチャしたものだが、通りの多いナイトシティはミニマップを常によく見ていないと曲がるべき道を真っすぐ通り抜けてしまう。

方角のみを示して細かい経路選択はプレイヤーに任せるという対策も考えられるが、ナイトシティの交通インフラは複雑であり、うっかり誤ったバイパスにでも乗ればかえって遠回りになってしまうだろう。ではミニマップに表示される領域を広くしたり、ARでメイン画面に経路を出したりするのはどうか?色々やり方は思いつくものの、根本的な問題はそこではない気がする。

結局のところ、現実の都市をゲーム空間に持ち込むことから始まったこのジャンルは、プレイヤーにナビなしで移動させることに全く適していないのだ。

我々が知らない街を車で移動するときはカーナビやGoogle Mapを使うように、現実世界で起きる問題をそのままゲーム世界に持ち込んでしまっている。快適なゲームプレイを目指すならば、ゲームのための空間設計を考えなくてはならない。

『Red Dead Redemption 2』『Ghost Of Tsushima』荒野型オープンワールドの移動

では、広大な見通しの良い土地を歩く、『Red Dead Redemption 2』といった作品はどうだろう。ミニマップの出すナビ経路は整備された道しか示さないので、あえて無視して最短の道を探るといった遊び方だって出来る。しかし、プレイ当時知人と感想会をやったところ、結局「美麗な世界を見たいからあえてミニマップを見ないようにするのが大変だった」という話になってしまった。

ならば、『Ghost Of Tsushima』はどうか?デュアルショック4のタッチパッドを撫でると目的地の方向に風が流れるというアイデアによって、もはやミニマップを消し去ることに成功している。いや、これでもまだ違和感は残ったままだ。

本当に気に食わなかったのは、マップでミッションを選びナビに従って移動するあの間、プレイヤーの自主性が失われることでゲーム世界が死んでしまっていることだ。

以前はオープンワールドとはそういうものであり突っ込むのはナンセンスだと考えていた。それに、プレイヤーがミッションの誘導に従わずに自由に探索することを心掛ければこの問題は回避できてしまうこともあり、その考え方を強固にしてしまっていた。しかし、既にその壁を越えてしまったゲームが存在する。

『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』『Death Stranding』意味ある空間で満たされたオープンワールド

『ゼルダの伝説 ブレスオブザワイルド』はオープンワールドゲームとしてプレイヤーを歩かせる方法がそもそも既存の作品と違っている。ミッションという概念はあれど存在感は殆どなく、プレイヤーが自身の興味のある方へ進むのが正解というスタンスで世界が設計されている。

言葉で言うのは簡単だが、それは従来のアクションゲームに近い密度で、広大なフィールドを埋めていく事を指している。その先を見たいと思わせる凹凸な丘は自動生成されたものでは無く、任天堂曰く広大なフィールドの中でプレイヤーの興味を引くために試行錯誤した結果生み出されたものらしい。『ウィッチャー3』などの作品が自動生成された地形にイベントを埋め込んでいく形で開発されているのに対して、見事なまでに裏返った設計思想だ。そこにクラフト要素、サバイバル要素が加わることで、全ての空間が意味で満たされている。

画面の端にはミニマップも表示されているが、プレイ中ここを確認した記憶は殆ど無い。

もう一つ、自分の大好きなゲームである『Death Stranding』も次世代型の設計を持っている。

『ブレスオブザワイルド』と異なり、荷物配達ゲームである本作はミッション制を採用している。ただし、目的地までたどり着ければどんなルートをどんな方法で進んでも良いわけで、プレイヤーは常に選択肢を問われ続ける状態になる。更にはゴツゴツとした斜面を歩くと転倒するといったシステムにより、足元の小石から遠くにそびえたつ山まで、目に見える全てが意味あるものとしてプレイヤーの前に立ち上がってくる。

これらの作品は悪戯にプレイヤーから意思を奪ったりしない。また、何らかの手段で世界を意味で満たし、足元から地平線までを一画面で描写することできる3Dゲームのパースペクティブを使ってプレイヤーを歩かせ続ける。

『Outward』BotWフォロワーの時代

ミニマップの話には結論が付いたのでここからはおまけ。『ブレスオブザワイルド』フォロワーと呼ばれる作品が近年少しずつリリースされているが、その中でも自分が気に入ったのは『Outward』だ。

『Outward』はカナダの新鋭デベロッパーNine Dots StudioによるオープンワールドアクションRPGだ。RPGとしては旅をシミュレートする方向性であり、定期的な食事や水分補給が求められ、砂漠を渡る際は涼しげな服を着るなど体温調節も必要だ。クラフト要素、サバイバル要素を採用しており、プレイヤーは狩猟や採取を繰り返しながら広大な世界を自由に探索することになる。

しかし実際に遊んでみて度肝を抜かれたのが、マップにプレイヤーの現在位置が表示されないという仕様だ。

つまり、マップの情報とプレイヤーの視界に映る地形を照らし合わせながら現在位置を推測しなければならない。街を出た直後ならばまだ大丈夫だが、ダンジョンを通り抜けたら知らない土地だった、という場面ではもう大変なことになる。本作は2人までの協力プレイに対応しているが、現在位置の推理が食い違ってあーだこーだと喧嘩する時間が無性に楽しい。不親切なのは間違いないが、プレイヤーに世界を観察させて歩かせるのがとても上手いゲームだ。

うだうだ書いたが、言いたいのは自分はゲーム世界を死なせない作品が好きだってことだ。

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