2019年は稀に見る豊潤の年で、懇意のデバロッパーの新作が出続けた上に、DevotionやFLOWERSなど素晴らしい新規タイトルとの出会いもあった。自分はつなぎ的にゲームを買わないので興味のあるタイトルをクリアしたら可処分時間は他の趣味に割くのだけれど、良くも悪くも今年はゲームをしていた記憶しかない。
プレイしたゲームは以下。
PC
- ANTHEM
- APE OUT
- BELOW
- Braid
- Devotion
- My Friend Pedro
- Project Winter
- Sekiro:Shadows Die Twice
- Travis Strikes Again: No More Heroes
- Wattan
- Zero Escape: The Nonary Games
- 殻の少女HD
PS4
- ACE COMBAT 7: SKIES UNKNOWN
- Borderlands3
- DEATH STRANDING
- Devil May Cry 5
- FLOWERS 四季
- KINGDOM HEARTS Ⅲ
- Sayonara Wild Hearts
- サムライスピリッツ
- 新サクラ大戦
- 13機兵防衛圏
Switch
- AI:ソムニウムファイル
- アストラルチェイン
- ファイヤーエンブレム風花雪月
- リングフィット アドベンチャー
- 熱血硬派くにおくん外伝 River City Girls
Arcade
- 星と翼のパラドクス
例年の基準であれば取り上げるべき良作だらけだが、特に印象に残ったものについてコメントする。
星と翼のパラドクス
『スペースハリアー』のような可動型筐体にツインスティックとペダルを装備して、ロボットのコクピットを再現するというド直球の発想で作られたであろうアーケードゲーム。制作は『ガンスリンガーストラトス』のバイキングが担当しており、ゲーム内容も8on8のチーム対抗戦になっているなど、下地は確立されたものを流用しているため、見た目の奇抜さに反してゲームセンターによく馴染んでいる不思議な新規タイトル。
『星と翼のパラドクス』が素晴らしいのは、ロボット的なアクションと、マルチプレイヤー型対戦ゲームのルールがうまく紐づいていること。
本作はキル数を競う純粋な対人アクションではなく、フィールドに点在する拠点を奪い合うもの。このためロボット同士でチャンバラをするのみでなく、戦況を把握して適時移動する必要がある。そこで重要となるのがロボットを変形して高速移動する「フルドライブ」と呼ばれるアクションで、ハイパードライブで窮地の戦場に駆け付けるような体験が味わえる。この戦闘と移動を激しく繰り返すゲーム進行によって、プレイヤーは高機動変形ロボットを操っているかのような感覚に浸ることができる。
余談だが、本作と並行でプレイしていた『ANTHEM』は、あのアイアンマンスーツをハクスラFPSにどう結び付けるかというアイデアが出ないままリリースされたかのような残念な出来で、この2作は対照的だなあと見ていたりした。
Travis Strikes Again
ノーモアヒーローズのスピンオフ作。実のところ前情報からは惹かれないどころか拒否反応すらあったタイトルで、初報がインディーゲームを紹介するNINDIES SHOWCASEでの発表だったり(あのGHMがインディーゲームデベロッパーを名乗るの?)、トラヴィスが架空のビデオゲームの世界に迷い込むというどこまで本気なのか分からないストーリーなど気に食わない部分が多かった。しかし、実際にゲームをクリアしての結論としては、須田剛一作品の中でもトップクラスで好きな一本になった。
本作で最初に違和感を感じるのは、殺したゲームソフトの主人公に対するトラヴィスの奇妙なほどに強い敬意だ。彼らのバックボーンはほぼ語られないため、プレイヤーはどこか置いてきぼりにされた印象を覚えるだろう。ゲームを進めることでうっすらと分かってくるのは、本作は世に送り出すことが出来なかったゲームにまつわる話だということだ。そもそも本作の舞台となるゲームソフトは架空のゲームハード「デスドライブMk-Ⅱ」の専用ソフトウェアであり、このハードもろとも発売されなかった。
ゲーム制作における苦悩なんてテーマは、フリーゲームやインディーの世界では散々扱われてきた手垢の付いたものでもある。では須田剛一がどう調理したかというと、湿っぽい開発側の物語などには触れず、トラヴィスが発売されなかったゲームの主人公らを殺してケリをつけていくという内容になった。多くのプレイヤーがこの構図に気付く頃に、GHMが実際に手がけたソフトである『シャドウオブザダムド』の存在しないはずの続編が登場し、緊張感はピークを迎える。
本作はコンソールのフィールドで活躍してきたクリエーターがこのテーマを扱った故の主題に対しての語られなさが目立つ。しかし、その迂回具合が事の深刻さ、複雑さを強く刻み付けておりそこに唯一無二の魅力があると思う。それは『シャドウオブザダムド』の原案となったカフカの『城』みたいな語り口だし、そういえば須田剛一は『Travis Strikes Again』の発売直前に行われたインタビューで「好きな小説は?」という質問に咄嗟にカフカの『城』を上げていた。
余談だが、最近はsteamの「Remote Play Together」を使って2週目を2人プレイで楽しんでいる。1人プレイ時は知る由もなかったが、本作は味方にも当たり判定がある『くにおくん』みたいな仕様になっていて、適度にちょっかいを出したりできるのが楽しい。ただし、第2ステージの「Life is Destory」で2人でマップ回転をしていると簡単に進行不能状態に陥るのは設計甘いと思うよ!
13機兵防衛圏
『13機兵防衛圏』はあらゆる点で自分と相性の良いタイトルだった。タイトルこそロボット物のようだが、SF色を前面に押し出した内容で『ゼーガペイン』のようなストーリーが展開される。それに複数主人公による群青劇やアーカイブを用いた断片的なストーリーテリングで膨大なサブカルネタを盛り込むっていうのは自分のオールタイムベストである『SIREN』と同じアプローチだし好きにならない訳がない。取り扱っているSFネタは広く、HGウェルズなどの超古典から、ダンカン・ジョーンズなどの最近の作品までフォローされている。(緒方捻二シナリオはまんま『SOURCE CODE』だよね!)
実のところこれまでのバニラウェア作品との相性はあまり良くなくて、ビジュアルは最高だがアクションで大事なところを落としているなと素直に楽しめないことが多かった。(例えば『ドラゴンズクラウン』ならベルトスクロールアクションなのに緊急回避ができるせいで間合いの遊びがないとか)そういった意味でも、ADVである『13機兵防衛圏』はずっと待ち望んでいたゲームだった。
アストラルチェイン
『ニーア オートマタ』でゲームデザイナーを務めた田浦貴久がディレクションを担当した新作アクションゲーム。『ニーア オートマタ』で不思議だった”緊急回避後に出せるカウンター攻撃に無敵判定がなく打ち負ける”という仕様が継承されていて「あれ、わざとやっていたのか!」という感動があった。プラチナらしいアクションとか、そういう枠にとらわれたりしない、独自の哲学を持っている人なのかなと思う。
『アストラルチェイン』が面白いのは、90年代のPS1のRPGみたいに本筋と関係ない遊びがごった煮になっているところ。メインストーリーは戦闘のみでなく捜索パートと半々になっているし、それらも無視して空き缶集めやアイスクリーム運びなどのサイドクエストに勤しむこともできる。プレイ開始直後こそ「いいから戦わせろ!」ともどかしく感じていたが、最近では見なくなった間の抜けたリズムがだんだん心地よくなってくる。表層はプラチナゲームズ謹製のバリバリのアクションゲームなのに、手触りは懐かしのRPGという奇妙すぎる体験がある。
ちなみに、そんな内容に呼応してかゲーム後半では舞台がスタイリッシュな都市から混沌とした中華街へ移ったり、エヴァンゲリオンのような90年代末な物語が展開されたりする。
『13機兵防衛圏』とあわせて、2010年代の終わりにレトロスペクティヴなタイトルが出てきたという点も面白かった。
以上。
『DEATH STRANDING』、『flowers』も素晴らしかったが、これらは個別に記事を書いたのでそちらをどうぞ。
ジャンル名「百合系ミステリィADV」とは『flowers』レビュー
オブジェクト指向で世界のことを考える デス・ストランディングと蓮沼執太について
Goty記事を書くだけの場所となりかけているこのブログだけど、今年は多少更新できてよかった。『flowers』はゲーム内容につられて実直に、『DEATH STRANDING』はその真逆で欲求のままに書き殴った。
デスストの記事はちょっと唐突だったけど、これは最近よく考えている蓮沼執太のアート方面の視点はゲームに転用できるのではないかというアイデアを使ってみたものになっている。蓮沼執太が音楽を使って世界を微分してみせる活動をしているのならば、ゲームはその逆で、最小の情報の組み合わせを積分にかけて世界を表現するものであるから。蓮沼執太フィルの『4O』なんて実はオブジェクト指向存在論(Object Oriented Ontology)の略らしく、プログラマーならすっと身体に入ってくる考え方だと思う。
今年は『NH3』、『Cyberpunk 2077』、テイルズ新作あたりを楽しみにしています。