格ゲーについて語りたい。(2) アドリブ性はどこで生まれる?

前回は、格ゲーとは同じことを何度も繰り返して楽しめるゲームであること、またそのシステムの特徴から敷居の高さが生まれてしまうことを話した。そしてこれから格ゲーをメジャーに引っ張り上げる方法を考えていこうと思うが、その前にいくつか寄り道しておきたい。今回は格ゲーが繰り返し遊べる理由、アドリブ性(前回はアドリブ感と呼んでいたけれど)についてまず掘り下げる。格ゲーを実際に遊ぶうえで理解しておきたい重要な要素なので、格ゲー初心者の方には是非ゆっくり読んでいただきたい。

格ゲーのアドリブ性がどこで生まれるか?というと、敵にダメージを与えるための豊富な選択肢の中からプレイヤーが下す、一瞬一瞬の判断によるものだと思う。そして格ゲーはこの判断基準を単純化させないための仕組みを持っている。

格ゲー用語に画面端という言葉がある。画面端とは2D格闘ゲームにおける行動範囲の限界のことで、キャラクターはそれ以上先へ進むことが出来ない。画面端に追い詰められると後ろへ逃げるという選択肢が無くなるので、敵の攻撃を受けやすくなってしまう。そうならないよう上手く立ち回ることが必要になるが、露骨に画面端からの脱出を狙っていると自分の行動を相手に読まれ、これまた攻撃を受け続けるハメになる。この辺の駆け引きが新たな攻防を生んでいるというわけ。

格闘ゲームのステージは狭いので、何も考えずに移動しているとすぐに画面端へ到達してしまう。なので格闘ゲームで勝つためには、単調に長いコンボを決めることを狙うより、敵を画面端へ追い詰めるなどして自分に有利な状況を作り試合の流れを握ることが重要になる。画面端はプレイヤーの全ての行動に影で影響を与えていて、より強く状況に応じた判断を要求している。つまりアドリブ性を強調しているわけだ。

▼P4Uには敵の攻撃を受けながら放つことの出来るボコスカアタックという技がある。ガードされた際の隙は大きいが、画面端でこれを敵に当てることが出来ればその後に強力なコンボで追撃することができる。画面端での駆け引きを加熱させながら、原作の世界を再現している特徴的なシステムだ。

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画面端と言えば、超有名な格闘ゲームの元祖、ストリートファイターⅡではチュン・リーというキャラだけが画面端へジャンプした後特定の方向にスティックを倒すことで壁を蹴りもう一度ジャンプする、いわゆる三角飛びという技を持っていた。そのためチュン・リーは他のキャラと比べて画面端に追い込まれることによるリスクが低かった。ストⅡはキャラクターごとの個性がはっきりとしたゲームで、飛び道具と強力な対空キックを持つ守りの固いガイル、手足を伸ばして遠くから攻撃することのできるダルシム、コマンドから発動する攻撃力の高い投げ技を持つザンギエフなど、それぞれが異なる強みを持っていた。キャラの組み合わせによって戦い方も柔軟に変更していく必要がある。

▼キャラの組み合わせを考えて有効に攻めよう(『ハイスコアガール』1巻 押切蓮介より)

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今回はここまで。次回もまだ寄り道します。格闘ゲームがどのように進化していきどのように受け入れられていったかという話になる予定で、その中で今回のアドリブ性についての話が関わってくる…はず。

格ゲーについて語りたい。(1) 格ゲーとはどんなゲームか?&敷居の高さの話

格ゲーは、誤解を恐れずに言えば同じことを繰り返してるだけのゲームだ。それなのに何故飽きないかと言ったらアドリブ感があるからだと僕は思っている。例えばもしあなたがRPGを周回プレイする時、一週目よりもサクサク進むはず。なぜなら攻略方法が分かっているから試行錯誤しなくてもいいからだ。

でも格ゲーは人の操作によって画面内を自由に動くキャラクターが色んな技を出して戦うゲームだから同じ展開がもう一度繰り返されることは絶対に無い。だからハマる人は本当にこのゲーム一本でいつまでも遊ぶことが出来る。じゃあそんな格ゲーが何故マイナー化してるかと言うとご存じの通り敷居が高い。

相手を倒すにはダメージを与える必要があるけれど、大きなダメージを与えるには出来るだけ長くコンボを繋げる必要がある。しかし長いコンボを決めるにはどういった順番で技を出せばいいかを覚えなければならない。逆にこれはある程度のコンボを覚えないとゲームで勝つことはまず不可能ということでもある。

それ以外にもゲーム(試合)を成立させるうえで覚えなければならない項目は多い。ここからは実際に触れたことのある人にしか伝わらないと思うけれど、上下段の揺さぶり、技はコマンドの入力から攻撃判定が出るまでは少し時間がかかるという概念、一部技発動時にキャラのあたり判定が無敵になるという概念などなど。書いていて自分でも少しウンザリしてしまう。

しかし、これらの要素は勿論無駄に存在しているわけでは無い。ゲームを触っていく中でそういったルールは自然と身についていくものだし、むしろ自分の中でルールを理解できた瞬間の喜びもゲームの大切な一部であるはず。これは他のゲームだって同じで、冒頭で触れたRPGの試行錯誤の部分こそが正にそうだと言える。

ではどうして格ゲーではルールが理解されないかと言うと、これまた冒頭で触れた「同じことを繰り返してるだけのゲーム」であることが問題。例えば、RPGは始めたばかりの頃は〇ボタンを押しているだけでも敵を倒すことが出来るが、徐々に弱点属性を突かなければ倒せない敵などが出現する。そうやってプレイヤーに少しずつ覚えられる量でシステムを利用させることでルールを学ばせる。しかし格ゲーを遊んでいるところを想像してみて欲しい。キャラクターとステージを選んだ次の瞬間、ラウンドコールと共に初心者だろうが経験者だろうが関係無く常に同じフィールドに投げ出されてしまう。これはマズイ。難易度曲線もクソも無い。

長くなったので一旦ここで。第2回に続きます。格ゲーの敷居の高さについては説明できたので、次回はそんな格ゲーをメジャーに引き上げるにはどうすればいいのか?という所に触れていく予定です。

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~おまけ~

最後に、現在僕も遊んでいるペルソナ4 ジ・アルティメット イン マヨナカアリーナ(P4U)の、チュートリアル動画とアーケード稼働初期時の大会動画のリンクを置いておきます。プレイヤー達は勝つために、このゲームのシステムを限られた時間の中で出来る限り理解する必要がありました。

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第2回へ→ http://snowtale05.tumblr.com/post/38860177330/2