20200229-01 富山/ありか

この日は以前から楽しみにしていた島地保武と環ROYのライブを見に富山へ行った。世間はコロナウイルスの影響でイベントが次々に中止になっていく真っ最中で、おそらく中止になるだろうなと半ば諦めていたところまさかの決行。かなり迷ったが、むしろ時期的にこれが外出できる最後のチャンスだろうなと行ってみることにした。

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富山は以前にも来たことがあるけど、散歩しているとポケモンに出てきそうな街だなぁといつも思う。

遠くには立山連峰が見えれど富山駅周辺は綺麗なまっ平。南側は雑多に賑わっているのに対して、北側はイベントホール、体育館、公園などの市民スペースが集まってるなど役割がはっきりと分かれていて、これを南北に伸びる路面電車が繋いでいる。新幹線の開通に合わせて開発されたのか、歴史については知らないけれど、わざとらしさを感じるくらい綺麗に整備されていてそのニュータウン的な光景にどきりとする。この日は地下通路の一部が封鎖されていたりしてさらにポケモン感が増していた。

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ライブ会場のオーバードホールもやはり駅の北側にあった。

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ありか(島地保武×環ROY


島地保武×環ROY -「ありか」 2018

『ありか』は元々2017年頃に行われたダンサーの島地保武とラッパーの環ROYのライブパフォーマンス。見ることができなかったのを悔やんでいたところ、富山での再演が決まり大歓喜でチケットを取った。自分は環ROYのファンなんだけどダンスとの相性は気になるところがあって、彼は『ゆめのあと』のMVに独特な佇まいの人間彫刻が立ち並ぶヴァンジ彫刻庭園美術館を使ってたりとラッパーの持つ身体性を自覚して扱っているふしがあった。なのでこの公演も面白い化学反応が起きるんじゃないかと期待していた。


環ROY / ゆめのあと

ライブが始まってまず驚いたのは、ダンスとラップを混ぜたパフォーマンスってどんな物だろうと見に来たのに、島地保武と環ROYが交互にラップとダンスを披露するスタイルで始まったこと。環ROYのライブは過去に何度か見ているが、そこでやっていた一人で永遠とフリースタイルをするパフォーマンスをそのまま披露していた。二人が絡むパフォーマンスも勿論あるのだけど、DJブースに齧り付いて曲を流す環ROYを島地保武が引き剥がしたりとなぜか対立する構図になっている。それも演技の一部として魅せるようにやっているというより、なんだか弛緩した感じがする。また、全身の筋肉を器用に使いながら動き続ける島地保武と比較して、門外漢である環ROYが視覚的な面白さを要求してくる広い舞台の中で存在感が薄れていくことに「大丈夫かこれ…」と、このときは不安になった。

ライブが進行していくと徐々に連携が取れていくが、それでも決定的に面白いパフォーマンスというのは見せず、実験的なやり取りが進んでいく。そしてとあるシーンで環ROYが「違う!」と叫ぶところで、ようやく自分なりに筋が通った気がした。

恐らく本当はラップとダンスがより噛み合ったように見える完成度の高いパフォーマンスをすることも可能だったのだと思う。どちらもリズムに基づいて実施できるという共通点があるので、同期させるのは決して難しくないはず。しかし、この公演では安易な着地点を出したりせず、ラップとダンスは全く異なるものなんだと真摯に捉えて、混ざり合う場所を思索する姿そのものを見せようとしているのだと自分は解釈した。例えばパフォーマンスの中で環ROYが「吸う、吐く」と唱えながらダンスをする場面があるけど、これは呼吸からリズムという概念が生まれてそこからダンスとラップが枝分かれするように現れたんじゃないかという起源まで遡って共通点を探っていたんじゃないかと思う。

まあ実際はコンテンポラリーダンスが分かる人には全編見どころだらけだったのかもしれない。ただこの解釈なら前半の弛緩した対立もお互いの違いを認めるためのシークエンスとして捉えることができ、異なる文化への敬意に満ちた幸福な空間だと感じられた。最後には『exchange//everything』を元にした明確なリズムのあるパフォーマンスで締められたけど、この時にはもっと長く対話的なパフォーマンスを見ていたかったなと思えるようになっていた。

最終的には大満足でした。富山まで来てよかった。

 

この後は会場付近にある富岩運河環水公園へ行ったんだけど、長くなったので続きは別の記事へ。