デジゲー博2016

今年も行ってきたので何点か紹介。

  • Merkava Avalanche / winter clown works

アーマードコアやタイタンフォールとは違う、バイク形状のロボットアクションゲーム。ワイヤーをひっかけたりすれ違いざまに斬撃を入れることで敵を転倒させ、最後に接近してとどめを刺す二段シークエンスのらしさがカッコいい。

  • Spring Crisis 2 / ほわいとふれあ

地面から野菜を引っこ抜いて戦うシステムが特徴の2Dアクションゲーム。任天堂好きならピンとくる方いらっしゃると思いますが、スーパーマリオUSAのリスペクト作品とのこと。強制スクロール、ツララ、電撃罠などステージごとの固有ギミックにも富んでいて最後まで飽きませんでした。

【ニコニコ動画】【紅楼夢12】Spring Crisis 2 PV【秋季例大祭3】

  • 「空棲精神性 レゾナンス / コンフリクタ」 / Reminisce

驚くべきことに正統なRezのフォロワー作品です。3D空間を飛び回りながらロックオンを駆使して敵を撃破していくことが目的ですが、ロックオンと撃破のSEは完全にRezを再現することに成功しています。また高速移動や近接攻撃といった行動すべてがインタラクティブミュージックになっており、何をしていても気持ちいい驚異の設計となっています。まだプレイヤーの動きと音楽との連携を作りこんだ段階のようでゲームの全容は見えてきませんが、今後が非常に楽しみです。

  • 惑星まりも

謎の新作を購入しました。なぞー。

  • Halocline.Systems / 

    PostHumanWanderings

謎です。システムはMystなどのPS1時代の3Dアドベンチャーですが、クリアの概念はなく、部屋からアクセスできる映像コンテンツを閲覧したり、惑星を散策することを楽しむゲームです。3Dグラフィック創世記に戻りたくなったときのために、このデモディスクは大切にとっておくことにします。

私的GOTY 2015年のオススメゲーム

今年プレイしたゲームで特に印象に残った作品を紹介していきます。また最後に2015年のベスト作品を一本選出します。

テイルズオブゼスティリア

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思えば2015年はテイルズから始まった年でした。TOZの優れている点は、戦闘システムが3D化(マルチライン化)した時からずっと付き纏っている、後衛キャラの防衛問題に解答を出したことにあります。

2D時代のテイルズの戦闘システムは、前線を守るゲームでした。近接攻撃キャラが敵を前線に押し留め後衛キャラを守ることで、攻撃魔法や回復魔法が機能し戦闘を有利に進められるようになります。2003年に発売されたテイルズオブシンフォニアでは初めて全編3Dでの制作が行われ、これは見た目の進化だけでなく、戦闘フィールドが3D化されたことで水平方向への広がりが生まれ、より複雑な戦闘を楽しむことができるようになりました。しかし同時に2Dではあった前線という概念がなくなったことで、後衛キャラがボコられやすくなるという問題も生まれました。

それから10年以上経った現在、TOZはこの問題の解答として「神衣」システムを実装していました。これはボタンひとつで近接攻撃キャラと後衛キャラが「合体」し、強力な範囲攻撃を繰り出せる1キャラになるという冗談のようなシステムです。しかしこれによりTOZは3D化以降、最も欠点のない戦闘システムを持った作品となったのでした。

△初めて見たときは面食らいましたが、プレイしてみると本当に快適なのです。

D4 season1

D4はレッドシーズプロファイルのディレクターを務めたSWERY氏によるアドベンチャーゲームです。レッドシーズプロファイルはドラマ「ツインピークス」の影響を受けたオープンワールド形式のアドベンチャーゲームで、ケレン味の強い世界観やツインピークス風では終わらせない巧みなゲームデザインが光る作品でした。しかしアクションパートの完成度が低く地獄の仕上がりであったことから、最も評価が割れたゲームとしてギネスに認定された経歴を持ちます。本作はSWERY氏の作風はそのままに、広大なオープンワールドからは打って変わり、部屋の一室や飛行機の内部といった閉ざされた空間で様々なオブジェクトにインタラクトすることで謎を解いていくという、アクション要素の低い、レッドシーズプロファイルのいいとこ取りな内容となっています。

SWERY氏のゲームをプレイしていると小島監督の作品を思い出させられます。それは映画・ドラマなどの映像作品からの影響を受けていることや、また表現したいものとそのために必要なゲームデザインを構築できる手腕を持っているという点です。その巧みなゲームデザインゆえに、二人の作品はプレイヤーとゲームの関係をあぶり出すような演出が度々出現し機能します。すでに名作を連発しているSWERY氏ですが、この先さらにとんでもない何かを作ってくれるのではないかという予感をひしひしと感じています。

D4でSWERY氏の世界に触れ、もし興味が湧いたならばレッドシーズプロファイルもプレイしてみるのをお勧めします。

The Beginner’s Guide

The Beginners Guideは複雑な物語構造を持った作品です。このゲームはアマチュアのゲーム製作者であるCodaの作成したプライベートなゲーム群を、その知人であるDaveyが編集を加え一繋ぎの作品にしてネット上に公開したもの、という設定になっています。そして実際にこのゲームをSteam、Humble Storeで配信している人物こそ、「The Stanley Parable」の製作者でもあるDavey Wredenなのです。

「製作者による解説を聞きながらプレイできるゲーム」は、すでに存在しているものとしてはMGS4にて行われた「Guns of The HIDECHAN!Radio.」企画があります。しかし本作は純粋なドキュメンタリーではなく、ゲームプレイを通して、他人に公開する予定のなかったCodaの作品をなぜDaveyは勝手に編集して公開したのか?公開したことで二人に何が起こったのか?について物語られるフィクションです。コントローラーを握れば、Davey Wredenの仕掛けた秀逸な演出があなたを彼らの物語の中に投げ込んでくれるでしょう。

△「Guns of The HIDECHAN!Radio.」はゲーム内BGMを変更できるアイテムiPodを使用してオーディオコメンタリーをやろうという企画でした。

2015ベストゲーム

四季の狂剣・神無絶景

神無絶景とは、ゲームをプレイしている最中にふと音楽と演出が絶妙にかみ合った瞬間やゲーム内のキャラに完全に自己投影できてしまった瞬間に不意に涙を流してしまった時…神の介在しない絶景すなわち神無絶景を垣間見た瞬間と名付けたものである

2015年のベストゲームは四季の狂剣・神無絶景です。四季の狂剣・神無絶景は、サークル「みょふ~会」によるアクション&ノベルゲームで、江戸時代の日本をモチーフにした日常的に真剣勝負が行われる世界を舞台に、多数のキャラクター達の群青劇が描かれます。

まず驚かされるのが極限まで要素を削ぎ落とした一次元ゲージで表現されるバトルシステムです。基本的な操作もZキーによる「前進」(後退すら存在しない)とXキーによる「攻撃」の2パターンのみで、あとは補助的に使用されるキーが2つ存在するのみです。しかしながらキーの長押しによる細かい挙動制御や、一定条件で発動する特殊状況、そして画面の8割を埋めるflashで演出されるキャラクターアニメーションが奥深い戦闘を演出しています。これは個人製作による省力化思考から逆算して生み出されたものであるのは確かだとは思うのですが、Zキーの「前進」は本作の半分を占めるノベルパートを読み進めるためのZキーでもあり、ノベルパートと戦闘パートを違和感なく接続するための装置ともなっています。(キラー7の◯ボタンによる移動なんかを思い出したりします)

戦闘システムの練度もさることながら、本作の最大の魅力は、個人製作作品、商業作品含めて見渡してもまず目にかかれないほどの「キャラ」の立ったキャラクター達です。彼らはその強烈なキャラゆえに、己の信念のもと真剣勝負を挑み次々と散っていきます。そしてその中で「俺は死ぬわけにはいかないんだ」と叫ぶ主人公、緋夕絶機がEDへと走り続けます。Zキーを押し続け、多くの喪失を共にした緋夕絶機と共に迎えるEDには神無絶景が広がっていることでしょう。

以上2015年のオススメゲームでした。それでは良いお年を。

デジゲー博2015へ行ってきた

今年も行ってきましたので簡単にレポ。デジゲー博は展示会であり即売会であるため、ゲーム関係の何かなら何を持ち込んでも良いというところが気に入っています。あとはTIFのようにインディーなドレスコードを持ったゲームがもっと参戦すると面白いのですが、難しいですよね。

プラモウォーズ/電通未踏組

巨大スクリーンに戦艦フィギュアを設置して戦うゲームセンター顔負けの海戦タワーディフェンスゲーム。フィギュアを設置するとその位置から索敵エリアが展開され、エリア内に侵入した敵を自動で攻撃する。フィギュアの裏にはパターン画像が印刷されていて、これをスクリーンが認識するという仕組みだそう。野生の男氏の乗馬マシーン×oculus riftに並ぶインパクトでした。

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チート性能のほむほむの図

アトの跡/ほしさらい

「孤高のアオイロ」のほしさらいの新作。トップビュー視点のアクションゲームだが、体力の概念がほぼ廃止されており、代わりに主人公の後ろをついてくるヒロインを守ることが重要になる。ヨッシーアイランドやICOのような感じ。アクション面では攻撃行動に「反射」機能が付いている点が特殊で、敵の撃ってくる弾を攻撃すると打ち返して逆に相手を倒すことできる。ちなみにマップに転がっているオブジェクトを攻撃しても敵の方へ飛んでいくのでなんでもボコるのが正解。反射アクションの気持ちよさは充分確認できたので、完成版ではヒロインとのストーリーがどんなものになるか気になる。

VOXQUARTER/No Mark Games

昨年もプレイさせてもらったVOXQUARTER。最新版は戦闘バランスがよりシビアになったほか、各コマンドに経験値を振って強化できるシステムが追加され、戦闘前のビルドでうんうん悩む楽しみ方ができるようになりました。あまりにも楽しいのでついついラスボス戦までやってしまいましたが占有しすぎて少し申し訳なかった。

あとゲームデザインの魔導書も購入。あとでゆっくり読む。

みょふー会

夏コミで手に入れた四季の狂剣 神無絶景が最高の出来だったので、無印版神無絶景を購入。四季の狂剣 神無絶景はDL版が出ているのでオススメしておく。

これからの同人ショップのあり方についての同人誌/三月兎

秋葉原の同人ゲーム専門店三月兎による同人誌。三月兎の品揃えは凄まじく、同人ゲームで欲しいものがあればとりあえずこの店に行くようにしています。この本はそんな同人専門店を経営する中で得られた知見について書かれた貴重な資料なのです。きっと。(これから読む)

伊 for Arduboy/惑星まりも

ソナーで敵を察知して登場する前に魚雷で殺すSTG、伊のArduboy版の展示を見に行った。ArduboyはAuduinoベースで動く小型ゲームマシンで少し前にkickstarterをやってました(僕もBackしました)。まだ出荷されていなかったはずなので、開発者向けの先行版か何かを使っているのだと思います。実物は写真で見た印象よりも小さかったですが、PC版伊の面白さがしっかり再現されていました。

獣の花/MUJINA NEST

昨年も取り上げた獣の花。簡単に解説すると初心者向けにルールをリセットしようという思想の格闘ゲーム。結構気になっているのですが、正直展示物は去年とあまり変わってない感じ。基盤固め中なのだと勝手に想像してます。来年に期待!

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キャラデザ良いですよね。早く動かしたい。

箱庭の彼女/ふりかけ屋本店

zip zap bot(ごめんなさいタイトルうろ覚えです…)/デリハリゲーム開発ゼミ総合

この二作品は同時に紹介したい。両作は二つの共通点があって、一つはoculus rift用のVRコンテンツである事。もう一つはVRに監視カメラネタを絡めている事です。箱庭の彼女はRepubliqueのように監視カメラを通して少女を視認しながら基地の最深部へと侵入していくゲームです。せっかくのVRゲームなのに主観視点ではないのかと思われるかもですが、少女の存在感が濃く出ていてこれがなかなか良いのです。そして最深部へ到達すると少女は銃口をこちらへ向けて…とカッコイイオチが用意されています。次にzip zap bot(名前違うかも。指摘下さい)は下半身を無くし動けなくなったロボットが、監視カメラや他のロボットの視界をハックして復活を目指すという内容。システムは完全にWatchDogsのハックと同じものですが、oculus riftで遊ぶと部屋の立体感が感じられてこれまた良い。僕の中でデジゲー博は最新のoculusゲームの体験会の側面が強くなってきていますが、VRネタの最前線はここなのでは!と静かに興奮していたのでした。

以上。

M3で購入したもの達

M3とは?

音系オンリー即売会があったらいいのになぁ、と思ったことはありませんか? 実は私たちも思いました。
「ないなら作っちゃえ」というわけで、賛同してくださる方を募って、M3準備会を発足することにしました。
 現在M3は、音系・映像・マルチメディアを中心とした専門即売会を開催し、送り手と受け手のより密接な出会いの場を作ることを目標に活動しています。
 http://www.m3net.jp/about/index.html

という訳でM3に行ってきたので購入したCDを雑に公開してみる。たまにはゲーム以外のネタもいいよね。

1. Pastelphonic/Ymajet

Yamajet氏を知ったのは実はM3の一日前で、たまたまイベントでDJを見たのでした。Cytusなどなどの音ゲーに楽曲を提供されているそう。ゲーム好きなのか分からないけどイベントではマイティースイッチフォースの楽曲を流してくれたりした。

2.不思議の国のアリス/Bitplane

http://bitplane.info/special/alice/

アメリカン・マギーやヤン・シュヴァンクマイエルの作品みたいなイヤ~なアレンジされたアリスが好きなんだけど、音楽でそれに該当するものは意外と少ない(Nine Inch Nailsはマギーアリスのサントラなので除く)。が、俺たちのBitplaneがやってくれた!ありがとうBitplane!

3.Singular Edits/Bitplane

http://bitplane.info/special/singular_edits/

Bitplaneの単発発表曲を寄せ集めたアルバム。限定300枚生産のレア品。

4.Reincarnation/Veneo Isrugi

視聴コーナーで聞いて気になったので買い。特典で1時間超の過去作ミックス曲?が付いてきたんだけどこっちも良かった。

5. archive001: reworks+/kamome sano

Yamajet氏を知ったきっかけというのがこのkamome sano氏のリリースパーティ。DJイベントって初めて行ったけどバンドのライブとそんな変わらんのね。

6. ポンコツ・オデッセイ/椎名もた

【ニコニコ動画】【クロスフェード】ポンコツ・オデッセイ/椎名もた

先日「生きる」をリリースしたばかりだったのでこんなに早く新譜が出るとは想定外だった。「生きる」の裏盤的な立ち位置っぽい。

7.日常ニ溺レル / RocketeerTracks

視聴アンドジャケ買い。紙ジャケでもダンボールジャケなのだ。

8. 大吉音13/吉田音楽製作所

http://kitchonofficial.web.fc2.com/disc/daikichi.html#13

こちらも視聴買い。京大の作曲サークルの作品らしい。

 

以上。

M3は初参加だったんだけどデジゲー博の規模を予想して行ったらその4倍くらいで冷や汗をかいた。ただ人を動かすためのルールの作り方をよく分かった人達が運営しているらしく会場の移動は非常にスムーズに行えた。これがプロの仕事・・・。

特に素晴らしいと思ったのは販売場とは別にある視聴コーナー。この部屋では机の上に参加サークルから提供されたCDがずらーっと並べてあっていて、貸し出してるポータブルCDプレイヤーで自由に試聴することができる。売り場でも視聴コーナーはあったけど売り子さんが自主的に用意したものだし、曲作った本人の前で聞いた後にやっぱり買いませんとは言い辛い。

非常に楽しいイベントだったのでアンテナ広げて次のM3を待とう。

私的GOTY 2014年のオススメゲーム

今年もやります。私的GOTY記事です。PC、コンシューマ、スマートフォン、アーケード等プラットフォーム問わずオススメしたいお気に入りのタイトルを選出しました。また最後には個人的な趣味で選んだ3つの作品をランキング形式で紹介します。ホリデーセールで安くなっているものやフリーで公開されているものも多いので、年末年始のお供にいかがでしょうか。

I.R.P.2 

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あの悪夢が帰ってきました。前作I.R.P.は初心者向けプログラミング言語であるHot Soup Processorを用いて制作されたゲームを募集するHSPプログラムコンテストの2008年優秀賞受賞作品です。プログラミングの技術の優劣に関わらず多くの人に作品を発表する機会を提供したいという大会の目的からか、初心者の習作のようなものから個人制作とは思えない本格的な3Dアクションまで多様な作品が投稿されています。そんな中賞を勝ち取ったI.R.P.は、高い技術で勝負するタイプの作品ではなくアイデアと演出力で圧倒していくタイプの作品でした。

作者のKanoguti氏はネット上に多くのフリーソフト、イラスト、音楽などを公開していますが、ネガティブかつ内向的な内容のものが多く、I.R.P.もその一つです。ゲーム内容としては短編のゲームを連続でプレイしていくというもので、マップチップで構成された空間を俯瞰視点で歩くようなものから、3D映像、音楽プレイヤー、キー入力すると反応するもの(?)など様々です。シュールな世界を不条理なルールに基づいて冒険するゲームには「LSD」や「ゆめにっき」といった先人達がいますが、明確な目標を設定しないという斬新さは快楽の薄さにも繋がっていました。こういった特性からこの手のゲームはアートとして扱われることが多いですが、I.R.P.は異なるタイプのゲームを短いスパンで提供することでプレイヤーに飽きを感じさせないことに成功しています。さて、I.R.P.2ですが大きくシステムは変わずより洗練された表現で描かれる精神世界を旅することが出来ます。

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ちなみに正式名称はI.R.P.2ではなく「I.R.P. Intelligent-Rackety-Paradise」です。前作は「I.R.P. Imagination-Reality-Paradise」、ややこしいですね。両作ともフリーで公開されているので気になった方は今すぐどうぞ。

I.R.P.2
I.R.P.

SPACE TO GO

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むかしむかし、ノベルゲームは果たしてゲームと言えるのか?という議論がなされていた時代がありました。これに対して明確な答えを出そうという気はありませんが、自分の好きなタイミングで文章を読み進めるインタラクティブ性がノベルゲームをゲームたらしめていると僕は考えます。このSPACE TO GOはノベルゲームに音楽を融合することでそのインタラクティブ性を強調しようという試みがなされています。

ゲーム内容は非常にシンプルです。スペースキーを押すとBGMと共に画面奥からテキストが流れくる、以上です。重要なのは流れるBGMがテキストと同様に細切れになっており、ボタンを押してテキストを読み進めるのと同期して音楽が展開していくという点です。タイミングよくスペースキーを押せば綺麗にひと繋ぎの曲が流れますし、ゆっくり進めたり早く進めることも可能です。リズムゲームは楽器を演奏する楽しさを教えてくれましたが、SPACE TO GOはそれとは異なる新しい体験を与えてくれるでしょう。

本作品はブラウザ上で公開されているので興味のある方は今すぐどうぞ。

SPACE TO GO(日本語版) | UnityGameUploader

英語版もあります。文章が英語表記になっただけですが、言語の性質の違いがゲーム体験にも差異を与えているように感じます。

SPACE TO GO (LD29)

Oquonie

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OquonieはiOS向けに配信されているアドベンチャーゲームです。プレイヤーはたくさんの部屋が連なって構成される世界を旅することになります。作者のAliceffekt氏はゲームだけでなく音楽やスマートフォン向けアプリなど様々な形態で作品を発表しています。僕が初めて知った彼の作品はHiversairesで、これは弐瓶勉(シドニアの騎士の作者だよ)の漫画のような世界をポイント&クリックで進むアドベンチャーゲームでした。同時期に発表されたアルバムも二瓶氏風です。

<a href=“http://aliceffekt.bandcamp.com/album/genesis-iii-20-ov-idyllic-miners” data-mce-href=“http://aliceffekt.bandcamp.com/album/genesis-iii-20-ov-idyllic-miners”>Genesis III.20 ‘Ov Idyllic Miners by aliceffekt</a>

その他の作品も無機質で静寂な印象を受けるものが多いですが、本作は新しい表現に挑戦していて手書き調のグラフィックに木や石で作られた部屋など温かみのある世界を描いています。部屋にはちゃぶ台やふすま、コピー機に木目ダンスなどがあり、やはり日本文化からの影響を受けているように思えます。本作の世界は3×3マスに綺麗に収まる部屋が連なる形をしていますが、異文化から見た日本家屋ってこんな感じなんでしょうか。

Aliceffekt氏のゲームの魅力はやはり圧倒的な世界観だと思いますが、美しいアートを持ったゲームは世に溢れています。その中で埋もれない魅力を放っているのはアートをしっかり支えるメカニクスを構築しつつ、デバイスの性質とのすり合わせまでも完璧にやってのけるという点でしょう。Hiversairesでは操作方法としてポイント&クリックを採用しています。スマートフォンやタブレットでは「Aボタン」や「Zキー」のような物理ボタンを持たないため、バーチャルパッドで対応するようなやり方では手触りが悪く、体験を損ねてしまうという問題があります。そういった中でポイント&クリックはタッチパネルと親和性がいいです。Oquonieに関してもスワイプとタッチのみで全ての操作が可能です。

他にもスマートフォンのゲームで地味に効いてくる問題としてセーブデータの扱いというのがあって、電話やメールの対応でアプリを閉じられると進行状況は消えてしまいます。この問題に関してもOquonieとHiversairesの二作はクリアしており、進行状況が飛んでもダメージが小さくなるようなゲーム構造になっています。

そもそもAliceffekt氏はゲームだけでなく歩数に合わせてグラフィックが変化していく万歩計や、独自表記の時計といったスマートフォン向けアプリを過去に発表しており、デバイスの機能を意識したつくり方をしています(しかもどれも完成度が非常に高い)。スマートフォン向けゲーム制作の手法はまだ完成されていない部分が多いですが、そういった中で適切なメカニクスを選択できる美的感覚の持ち主であるAliceffekt氏の作品には強い説得力があります。

余談ですが、個人的には奇妙な住人たちで溢れる世界やモノトーンなデザインはflashゲームのforgetシリーズを思い出します。

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▲かつてのflash黄金期に生み出されたforgetシリーズ。個性溢れる住人達と会話することでゲームが進行していきます。

ではここからランキングへ。

3位 君と彼女と彼女の恋。

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まさかの18禁枠です。サウンドノベルが好きだ!という人でも美少女ゲームとなると把握できていないという人は多いと思います(かく言う自分もその一人です)。近年のテキストアドベンチャーを表舞台から牽引したタイトルと言えばシュタインズゲートや428になるのでしょうが、本作を開発したニトロプラスもスマガ、アザナエルといったゲームでしか語れないストーリーを追求したタイトルを発表してきました。君と彼女と彼女の恋。もその流れの中にある作品ですが、残念なことに話題性がありすぎる仕掛けだったせいかネタバレが蔓延してしまっています。ここで触れたいのは本作のゴールは上の広告ショーケースのようなドッキリを体験させることにあるわけではないということです。

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テキストアドベンチャーは選択肢によってストーリーが変わるフローチャート構造になっていますが、プレイヤーからすれば全ての展開を見たくなるのが自然です。これが美少女ゲームとなると、本命キャラと結ばれたなら2周目は別のキャラを攻略したいという風になってしまいます。この問題意識を多少なり含んでいる作品としてはシュタインズゲートがそうで、あのストーリーは映画バタフライエフェクトのように誰かを幸せにすることで他の誰かが不幸を被ってしまうことを主人公が体験する形になっています。本作はこの問題に真っ向から立ち向かっており、その結果美少女ゲームという枠を超えテキストアドベンチャーというジャンルの二者択一性を強くあぶり出すことに成功しています。選択肢に真剣に悩んだあの頃の気持ちを取り戻したい、という方は是非どうぞ。

(本作は2013年のゲームですが、DL版の発売日が今年ということで許して下さい)

2位 サイコブレイク

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サイコブレイクはバイオハザードシリーズの生みの親である三上真司氏率いるタンゴによって開発されたサバイバルシューターです。

本作では海外のAAAタイトルに見られるような没入感を高めるための演出を取り入れつつ、濃密なゲーム体験を提供することで差別化を図っています。4以降のバイオハザードのルールはそのままに、偏執的なまでにこだわられたであろうステージ構成は、アクションゲームにも関わらずパズルを解いているような気分にさせられます。弾薬制限も厳しくハンドガンの弾一つが貴重です。

また今回はウイルスパニック物では無く、とある事件に関わってしまった人物達が揃って悪夢のような世界へ迷い込んでしまうという映画ジェイコブス・ラダーのようなストーリーを採用しています。この設定はホラー要素を与えるだけでなく様々なシチュエーションを強引に繋ぐための理由付けとしても機能しており、空へ吸い込まれたと思ったら知らない街だった・・・なんて調子で病院、下水道、村、洋城、洋館、ビル、ハイウェイなど様々な場所を旅することが出来ます。

強固なレベルデザインと次々に移り変わるシチュエーションは濃密なゲーム体験を与えることに成功しています。最近ゲームをしていても時間を無駄にしてしまっている気がして集中できないよ、なんて悩みを持つ現代人にオススメのタイトルです。

しかしあえて触れると最も惹かれたのは完成し切れなかった歪な部分だったりします。例えば近代ゲームらしく没入感を高める作り込みがされている一方で、木箱を素手攻撃で壊してアイテムを取得するといったゲームらしい部分が残されています。敵デザインにしても初公開PVに登場したキーパーのようなオシャレな奇形頭ボスもいればジャパニーズホラーからやって来たような貞子風のボスもいたりと統一感がありません。面白くなりそうならなんでも取り込んでしまおうという貪欲な思想で作られた本作は、とっ散らかってはいますがそれを含めて面白がれるならば特別な一本になるでしょう。

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▲本作のアイコン的キャラクターであるキーパーとの戦いは、映画的演出とゲームプレイが融合した見事なものとなっています

1位 The Vanishing of Ethan Carter

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1位に輝いたのはポーランドの開発スタジオThe Astronautsによる一人称アドベンチャーゲーム、The Vanishing of Ethan Carterです。プレイヤーは探偵ポール・プロスペローとなって、依頼主であるイーサン・カーター少年を探しにレッドクリークバレーへと訪れます。

本作は発売前からその美麗なグラフィックが話題になっていました。ゲームの画作りはハードウェアのスペック向上により近年大きく発展していますが、あくまで雛形から生成されるオブジェクトの集合体であり限界があります。その点巧みな配置と作り込みにより構築されるレッドクリークバレーは現実に近い存在感があります。

本記事ではあえて内容について深く触れないこととします。プレイする中で得られる情報からプレイヤーの目的やこの地で起きたことについて少しずつ理解していって下さい。

以上2014年のオススメゲームでした。引っかかる作品があれば幸いです。それでは皆さん、良いお年を。

デジゲー博へ行ってきた

デジゲー博を見に秋葉原へ行ってきました。以下、印象に残ったゲームを簡単に紹介。

・獣の花

見た目はよくある格闘ゲームだが、様々な特殊効果を発動できる札?システムを採用。必殺技やバーストやキャラ交代といったアクションはこの札を消費して行う。純粋なアクションゲームではなくリソース管理要素をミックスすることで間口を広くしようという試み。展示されていたものは最低限の操作しか行えない状態で札システムの完成度は分からなかったが、対戦ゲームの記事ばかり扱っている自分にとっては気になるタイトル。話を聞いていると公開時期や配布手段、ネットワーク対戦の仕様など細かいところまで計画が決まっているようで完成が期待出来そう。

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会場ではシステムの話ばかりしていましたが、パンフ裏で紹介されているキャラ設定も何気に良さげ。

公式サイトは執筆段階でカミングスーン。

・PlayBot

ウォーリーのように箱型に変形するロボットを操作して監視ロボットに見つからないように進むステルスアクションゲーム。ステルスゲームとしての見新しさはないが、注目するべきはロボット。生き生きとしているうえにガチャガチャ感のあるモーションが大変かわいい。かわいいロボットを摂取したい人達、動向を注目するべし。またもう一つ気になったのが試遊PCの隣のもう一台のPCに表示されていたバンドデシネ風のアートワーク。話を振ってみたところ、当日会場に居らっしゃらなかったようですがメンバーの一人が制作されたものとのこと。デモではロボットのデザインのみ再現されているようでしたが、完成に向けてバンドデシネ要素が強まると個人的に嬉しい。因みにこのアートワークは公式サイトの方で見れるようです。(画面下のロボットはドラッグで回転可能)

・ジャンプガン

2Dアクションにパズル要素を加えたゲームで、弾を当てたオブジェクトを浮かすことができるジャンプガンを駆使してゴールを目指す。主人公はジャンプが出来ないため鏡にジャンプガンを打ち込んで反射してきた弾でジャンプするというギミックが頻繁にあるが、パズルの解法が正しく障害物を華麗に飛び越えた時の心地よさはなかなかのもの。この辺りのプレイ感覚は非常にポータルに似ています。またシンプルなルールながら次々に攻略法が変わっていくステージに驚かされます。デジゲー博内でも頭ひとつ抜けた完成度でした。

・VQ3

スマートフォン向けに配信されているVOXQUESTシリーズの最新作。音楽とRPGの融合というテーマはそのままに、コマンドグラフ(?)を用いた戦闘システムを採用。コマンドグラフは自分の文章力ではちょっと説明が難しいが、カタンのマップのように並べられたマス一つ一つに攻撃、防御、回復といったコマンドが振られていて、1ターンごと隣接するマスへ移動しながらコマンドを選択するというもの。コマンドのふられ方には偏りがあり、マップの右側へ行くほど防御寄り、左側へ行くほど攻撃寄りになる。不思議でならなかったのがコマンドグラフなんて初めて見たのに初プレイでスッと理解できてしまったことで、今思うとこのシステムFF13のオプティマチェンジに似てる。右へ進めばディフェンダー。左へ進めばアタッカーといった具合。音楽要素としては選択したコマンドに応じて曲が変わるという仕様でここは前作を踏襲しているが、今作ではゲージを貯めることで発動できる必殺技が存在し、それがこのPVのラストの部分。

かっこ良すぎるよね・・・。

(ゲーム内容とは関係ないですがもらったチラシがザラ紙使っててこれがまた良い)

・Wired Soul

昔懐かしのベルトスクロールアクションゲーム。特に変わったシステムが組み込まれているわけでも無いですが、コンボ、投げ、ダウン追撃、ハメ(?)などアクションゲームのツボをしっかり抑えた作りでいつまでも遊んでいたくなるような魅力がある。500円で販売されていたので購入。

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会場でプレイした時よりもゲームスピードが早いのは気のせいだろうか…。

・木造校舎を歩く

Oculus Rift向けゲームで、学校の教室という同じアセットを使用して異なるシチューエーションを表現しようというプロジェクト。片方は昼の穏やかな教室、そして自分がプレイしたのが夜のホラー要素のある教室。密かに出ないかなと思ってたOculus Riftのホラーゲームですがこんなに早く体験できる日が来るとは…。内容としては雨の降る夜の教室をただ歩くだけ…なはずもなく、雷が落ちた瞬間だけ女子学生の姿が現れます。といってもむやみに驚かすようなものではなく、机をただ見つめる姿からは裏に流れるストーリーを感じさせます。他にもOculus Rift向けのゲームは至る所で展示されていましたが、アクションや女の子と戯れるようなもの以外のアプローチに挑戦していたのはこの木造校舎を歩くくらいだったような。こういった詩的な体験を提供するツールとしてヘッドマウントディスプレイが使用できるという可能性を見せてくれたと思います。

1時から4時まで居ましたがそれでも時間が足りないくらい充実してました。来年もあるならまた行きたい。

バットとボールで対戦。『Lethal League』

・格闘ゲームと対戦ゲーム

アーケードゲームとして生まれ、ネットインフラの整備による家庭用ゲーム機でのネット対戦実現を経て今でも新作が生まれ続けている格闘ゲーム。だがシステムの特性上プレイヤーに求められる知識が多く敷居が高いという問題は解決されないままだ。過去にこの問題に取り組もうとした作品も少なくない。例えば大乱闘スマッシュブラザーズやストリートファイターを製作したカプコンによるパワーストーンなどがそうだ。近年ではインディーゲームシーンからも同様のコンセプトを持ったタイトルが登場している。ジャンプと急降下キックのみで戦うDiveKick、長剣を持った棒人間を操作し画面端へと向かうNidhoggなどだ。そして今回紹介するLethal Leagueも、同じ系譜のコンセプトを持つといえるであろう作品だ。

パーティゲームとしての面が強いNidhoggだが、格闘ゲームの大会evo2013に開発段階のゲームが出展されたこともある

・Lethal Leagueのシステム

Lethal Leagueの大きな特徴は、攻撃方法が相手を直接攻撃するのではなくボールを打ちぶつけ合うという点だ。ゲームが開始されると画面上のどこかにボールが設置される。静止しているボールはいずれかのプレイヤーがバットで打つと等速直線運動を始め、ブロック崩しの球のように画面の中を跳ね回る。他のプレイヤーがこのボールに接触してしまうと一撃でアウトとなり、画面外へと飛んで行ってしまう。ここで他のプレイヤーと表現したのはボールには攻撃権が存在するからだ。攻撃権は最後にボールを打ったプレイヤーに与えられ、ボールは攻撃権を持ったプレイヤーを素通りしていく。堅苦しい表現を使っているが、自分で打った球が壁を跳ね返って来ても自分には当たらないというだけだ。そのため他のプレイヤーは逃げ続ける訳にもいかず、積極的にボールを打ち返さなければならない。

・Lethal Leagueの操作システム

Lethal Leagueの操作は2Dアクションゲームの方向キーとジャンプボタンによる移動に、スイング、バントのアクションを付け加えたものとなっている。

スイングボタンを押すとバットを振りボールを打ち返すことが出来る。また押し続ければ”溜め”が可能で、ボールをより早い速度で打ち返せる。ボールは通常地面と平行に飛んで行くが、方向キーを入力しながら打つことで上向き、下向きにその軌道を変えられる。これにより相手に狙いを定めてボールを飛ばしたり、また状況によっては壁をバウンドさせて相手の背中からのヒットを狙うようなことも可能だ。

バントボタンでボールを打つとボールはその場でゆっくりと宙に浮き上がる。誰かがスイングしたり地面にぶつかるかすると再び動き出す。ここで重要なのが、この時ボールはバント前の速度を保持しているということだ。凶悪な速度で暴れ回るボールをバントしても安全になるのは宙に浮いている一瞬だけで仕切り直しなどでは決してない。また同じ速度で襲い掛かってくるボールを警戒し次の手を打てるよう最大限の準備をしよう。

・作戦はその場で組み立てる

ボールは直線に動くため狙った方向へ飛ばすのは容易だが逆にいえば相手に見切られやすいということでもある。そこで相手の裏をかくような動きが必要になる。下の画像を見てほしい。これは出現したボールを下方へ打ち込んだ後、素早く追いかけ水平方向にスイングし直して相手に当てるという技。

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なかなか手元が忙しそうだが、このゲーム、操作が単純なので見た目以上に難しくない。そして驚異的なのは大抵のプレイヤーがこういった複合技をゲームを始めて最初の20分程度で自発的に発見することだ。

格闘ゲームならばこれはコンボと呼べるような動きだ。しかし格闘ゲームではどの技からどの技が繋がるといった情報は内側に隠されていて、手探りで探していくしか無い。それに対しLethal Leagueは攻撃手段であるボールが画面上に表示されており、同じ対戦ゲームでもまるで裏返ったような構図になっている。

・総括

格闘ゲームだろうと将棋だろうとゲームにはルールが必要である。そして長く楽しめるゲームとルールの単純さはトレードオフだ。格闘ゲームのコンボが複雑なのはルールの解明を遅らせることで間を持たせているという部分がある。その点でLethal Leagueは単純で飽きやすいと言えなくもないが、プレイヤーが自由にアクションを組み合わせて作戦を組み立てられる土壌を丁寧に作り込むことで、直感的かつ戦略性の高い対戦を提供することに成功している。

オススメです。

・おまけ

冒頭では格闘ゲームの敷居とアンチテーゼとして対戦ゲームの話をしましたが、正直なところLethal Leagueの源流はそこではないと思われます。

飛び道具をバットで打ち返す主人公。

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ゲーム内フォント。

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威力と比例した心地良いヒットストップ演出。

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そう、Lethal Leagueはスマッシュブラザーズから生まれたゲームなのでした。

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私的GOTY 2013年のオススメゲーム

2013年も残り僅か。というわけで私的GOTY記事です。PC、コンシューマ、スマートフォン、アーケードごちゃ混ぜでオススメしたいお気に入りのタイトルを選出しました。また最後には個人的な趣味で選んだ3つの作品をランキング形式で紹介します。プレイしたゲームのリストはこちらでご覧下さい。紹介している作品の中にはウィンターセールで安くなっているものやフリーで公開されているものも多いので、年末年始のお供にどうでしょうか。

Don’t Look Back 

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あのSuper Hexagonの開発者であるTerry Cavanaghの作品で、過去にwebで公開されていたもののiOS移植版。左右上下移動と小銃攻撃だけで完結する操作やピクセルで描かれたグラフィックなど全体的にシンプルな表現方法が選ばれており、それゆえ陰鬱な世界とストーリーが強く響きます。クリアに必要なプレイ時間も短く、サクッと良質なゲームを楽しみたいという方にオススメ。この画像にピンときたらとりあえず触ってみてはいかがでしょうか。フリーで公開されているので気になった方はweb版を今すぐどうぞ(こちら)。VVVVVVのVVVVVVita版も待ってます。

rain 

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rainはSCE開発のPS3向けDL専用タイトルで、カラダが透明になったことで雨を通すことでのみ視認される主人公を操り雨の降る街を進んでいくアクションアドベンチャーです。少女と共に進むという設定からはICOを連想させられますが、実際にプレイしてみるとアウターワールドの思い出が蘇りました。女の子はICOのヨルダのような守られる存在では無くこの街に迷い込んだもう一人の人間として協力し合う存在であり、そんな二人の関係が丁寧な導線によって演出されます(ただし丁寧過ぎて序盤は退屈になりがちだったりするのですが)。恐らく雰囲気ゲーとしての魅力を期待すると少し物足りない内容だと思います。AIパートナーをテーマにしたゲームは多くありますが、本作の魅力はそこにあるのです。

Brothers: a Tale of Two Sons

rainと同じく本作も二人のキャラクターが協力するタイプのゲームです。本作は主人公の兄弟が病気の父親を救うために万能の水を求め冒険に出るというストーリーで、コントローラーの右スティックで弟、左スティックで兄を操作するパズルアクションになっています。兄と弟それぞれ出来る事と出来ないことがあり、二人を適切に動かすことで数々の障害を乗り越えていきます。パズルは少し観察すればすぐに解ける程度の難易度にすることで、二人が協力し合って冒険が進んでいる感覚を自然に感じることが出来ます。ファンタジーな世界観ながら残酷さを含んでいる点も気に入っていて、そんな世界を兄弟が知る過程がより冒険を冒険足らしめることに機能しているよう感じます。兄と弟の違いはパズルを解くための役割としてのものだけでは無く、様々なオブジェクトに対してのリアクションの違いがゲーム世界をより深く感じさせます。

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▲闘いに敗れた巨人の血が水に流され運ばれていく。

BioShock Infinite

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初代BioShockのKen Levineを再び向かえて制作された正統続編であるBioShock Infinite。BioShockは思い入れのある作品でしたので今作には期待を寄せていました。しかしいざプレイしてみると、流れるように物語を体験させることを重点としたシステム変更が上手く機能しておらず、全体的に面白みが薄くなってしまったように感じました。世間では評価の高いストーリーもアメリカ人としての視点が求められる内容で感情移入し辛く、純粋に楽しむことが出来ませんでした。それでも特筆すべきはパートナーと共に行動するエリザベスの存在です。イベントシーンでの動きや台詞は勿論ですが、ゲーム内で出会うあらゆるオブジェクトにリアクションする彼女を見ることでプレイヤーはこの世界での出来事をより自然な形で自分自身の体験として受け入れることが出来ます。エリザベスは主人公に出会うまで空中都市の権力者により塔に囚われていたという設定を持っており、それもこの辺りに効いています。これはJRPGでもよく用いられる手法ですが、3D空間を一人称視点で観察するという現実により近い、ゲームとしてのお約束表現が少ないFPSシステムのゲームで使われることでより効果的になります。戦闘中もアイテムを投げたり特殊能力ティアによるギミックの具現化などでプレイヤーの手助けをしてくれます。彼女はこのゲームのストーリーテラーと戦闘時のパートナーを両方こなしているわけです。初代BioShockは主人公の前設定を出来るだけ排除しプレイヤーとのズレを最小限に抑えることが重要視されたタイトルでしたが、本作は他人であるブッカーを主人公とする三人称の物語をプレイヤー自身の物語として見せることを目指しています。その創意工夫はザナルカンドから別世界へやってきたプレイヤーと限りなくイコールな存在である主人公ティーダがヒロインユウナの居る世界を救うRPGであるFF10の作り込みをアメリカのゲーム文化側から行っているかのようで、そんな本作は三人称視点の物語に特化したゲームをプレイして育った日本人であり、同様に洋ゲーも愛してきたゲーマーからすれば、ご褒美とも言える特別なタイトルであるわけです。

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▲綿菓子を貰うエリザベス。プレイヤーが見ていなかろうと彼女は忙しい。

以上パートナーがテーマのゲーム3連続でした。

フェアルーン

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スキップモア開発のスマートフォン向けアクションRPGで、ハイドライド、ゼルダの伝説のように探索と謎解きを繰り返すタイプのゲームです。本作の特徴としてスマートフォンで快適にプレイさせるための徹底的なチューニングが挙げられます。まず戦闘ですが、攻撃ボタンなどは存在せず敵にぶつかるだけでプレイヤーとの間で互いのステータスに応じたHPのやり取りが行われます。バーチャルパッドは画面と分離した形で置かれており、指で画面が隠れて見えなくなるようなことは起きません。ゲーム進行もテンポよく進んでいくように設計されていて、じっくり腰を据えなくとも電車での移動時間など生活の隙間でサクッと楽しめるようになっています。単純にこのジャンルのゲームとして恐るべき完成度を誇っているうえに誰でも楽しめる癖の無い作りで、今までプレイしてきたスマートフォンのアプリの中でも間違いなくトップクラスの内容になっています。スマートフォンでも面白いゲームがあることは認めるけどゲーム機でのプレイ体験にはどうしても劣るよね、という方にも是非オススメしたい作品です。本作はiOS版とAndroid版の両方が公開されておりどちらも無料です。スキップモア作品ではスマートフォンに特化した脱出ゲームであるピクセルルームもオススメしておきます。

Groove Coaster

iOS向けの買い切りタイプの音楽ゲームとして登場したグルーブコースター。その後好評につき曲追加式のZEROが登場し、先月にはとうとうアーケード版が稼働開始しました。シビアな入力を求められるタイプのものとは方向性が違い、曲に合わせて目まぐるしく変化する画面の情報が入力タイミングを補完するようになっているのが面白いです。また叩くタイミングが表示されないアドリブポイントが存在し、これを探していく楽しみもあります。ガチなプレイを強要されないので電車で暇な時によく触ってました。AC版が登場すると聞いた時はタッチとフリックのみだったゲームを一体どうする気なんだ…と思いましたが、巨大画面とボタン付きレバーと真っ当に進化したようです。対戦モードでは相手のアイコンがレースゲーム風に追いかけてくる演出が熱い。アドリブで差を付けて勝利せよ。

Gravity

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ゲームプログラマNao_uさんが映画「Gravity」に衝撃を受け作成した宇宙遊泳体験アプリ。UnityのAsset Storeで配布されていたアセットを組み合わせて短時間で完成させたそうですが、物理演算で表現された重力の無い世界は非常にリアリティがあります。プレイヤーは有人機動ユニットの移動噴射を用いて自由な宇宙遊泳が可能ですが、この操作が非常に難しいです。因みにウィキペディアによるとこのユニットの使用は実用的では無いとされ船外活動は宇宙ステーションのロボットアームに身体を固定して行われるようになったそうですが、なんだかその理由が分かるような気がします。ステーションに接触して反動の受け方を確かめたり、遠くに見えるスペースシャトルを目指して移動噴射してみるなどして存分に宇宙空間に楽しんで下さい。リンクはこちらから。

ではここからランキングへ。

3位 Skullgirls

公式曰く「クールデコ」な世界観を持つチーム制格闘ゲーム。海外アニメが好き人ならばこのキャラデザにはグッと来るものがあるはず。家のテレビでカートゥーンネットワークが見れる環境で育ったため、周りがNARUTOの話をする中パワーパフガールズにハマる幼少期を過ごした人間としては一周して帰ってきたような感覚です。海外産の格闘ゲームとしては緻密な作り込みで完成度が高く、手触りもカプコンのMVCシリーズに似ていて日本人でも違和感なく楽しめます。またスタッフの趣味なのか、日本のアニメやゲームの影響が至る所に見られます。因みにBGM担当があの山根ミチルだったりします。

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▲恐らく日本語版でなくともこの仕様。それがスカルガールズ。

EVO2013のメイン競技のユーザー投票枠にスマブラDXに次いでの2位に選ばれたり、日本でもNESiCAxLiveで配信されるなど世間の評価も高いです。更にはDLCキャラクターを追加するクラウドファンディングも成功し絶好調でしたが、コンシューマ版のパブリッシャーであるコナミとの連絡が取れなくなりパッチが配信できない状況に陥り契約破棄が決定。ようやく1月に新パブリッシャーから最新バージョンのスカルガールズが配信できる目処が立ちましたが今度は日本でのパブリッシャーであるサイバーフロントが経営の悪化により解散し再び不安な状況に。どうかスカルガールズに明るい未来を。

2位 La-Mulana

自分の良いゲームの判断基準の一つに「そこに居るだけで楽しいかどうか」というのがあるのですが、これを久々に満たしてしてくれたタイトルです。ラ・ムラーナは考古学者ルエミーザ・小杉博士を操作し遺跡の謎を解く探索アクションゲーム。そして公式PVでも強調されるほど高難易度の死にゲーでもあります。そのくせに経験値を集めて体力の上限を上げられるRPG要素や、異様に値段が高い上に使い切りだが高威力な拳銃の存在など、心を折られながらも誰でも進められるような配慮がされているのがなかなかニクいです。高い精度の動きを要求される場面もありますが、繰り返しの挑戦でなんとか突破していける程度に抑えられています。このあたりの絶妙なチューニングはデモンズソウルを思い出させます。どちらかと言えばアクションよりも謎解きで詰まる場面のほうが多く、探索しながら頭を捻って考えることの方が重要です。遺跡のマップ構造と主人公の動き(特殊なジャンプ中挙動など)がしっかりと結び付けられて作られているところにもこだわりが見え、よくネタにされる少しの段差から落ちると死んでしまうスペランカーの弱さが洞窟探検の感覚の再現だったように、遺跡を探索する感覚が制作側の意図したとおりに上手く再現されているように思えます。インディーゲームとしてはかなりのボリュームがあり、心ゆくまで遺跡探検を楽しむことが出来ます。本作の発売日は去年だったりしますが、steam版の配信が今年の4月ということで許して下さい。

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▲ワクワク感がぶっ続く。(※ただし個人差があります)

1位ジョジョの奇妙な冒険 オールスターバトル

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1位に選んだのは今まで紹介してきた中でも特に僕の嗜好が反映されているだろうタイトル、ジョジョの奇妙な冒険オールスターバトルです。本作の開発担当であるCC2は高い品質のキャラクターゲームを開発することで有名です。その中でも特にナルティメットストーム2は僕にとって思い入れのある作品で、ストーリーモードのサスケ対イタチ戦は対戦ゲームであるにも関わらず、アンチャーテッドのような海外のAAAタイトルがやっている映画の中の世界に自分が入り込んだように感じる演出に十分に勝負できていると思える程の出来の良さでした。しかしネットワーク対戦では本作が目指したアクションの楽しさを無視したような勝つことだけを優先した戦法が目立ち殺伐とした空気が漂っていました。そんなCC2の最新作である本作は対戦システムが格闘ゲームに近いものになったことでついにキャラクターゲームでありながらネットワーク対戦に耐えるゲームシステムを得ることに成功しました。CC2がこれまで培ってきた能力を存分に活かし通常攻撃や必殺技その一つ一つが超高密度のアニメーションで作られており、上手くキャラクターを動かせた時の快楽はひとしおです。更に相手の攻撃を直前にガードすることで一瞬の時間停止と共に硬直が破棄され反撃が出来るスタイリッシュムーブシステムが読み合いを白熱させます(ストⅢのブッロキングとは異なり時間停止のおかげで誰でも反撃できるのがポイント)。原作ファンに楽しんでもらうためのサービスが散りばめられていることで格闘ゲームとしては初心者向けのシステムに仕上がり、非常に居心地の良い空間が出来上がっています。そんなわけで発売からしばらくたった今でも楽しく遊び続けていて、総プレイ時間はそろそろ180時間を超えます。ナルティメットストームのモヤモヤを思い出すと、こうしてオンライン対戦が楽しめるゲームがCC2から登場したことが本当に感慨深いです。発売当初は対戦バランスの悪さが指摘されていましたがプレイヤーに叩かれながらも度重なるアップデートを経たことで改善され今では対戦ツールとして十分なレベルになっていると思います。ソーシャルゲームのスタミナ制度を用いたキャンペーンモードやテキストばかりのストーリーモードも話題になっていましたが、それは本作が対戦に特化した作りになっているためにやむを得なく切り捨てた部分で大きな欠点では無いと考えています。もし続編の制作が決定すればきっと原作の名場面を再現するストーリーモードが追加され誰でも楽しめる作品になることでしょう。本作は以前に長めのレビュー記事を書いているので興味のある方はそちらもご覧下さい(リンク)。

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▲「隣の世界」をワンカットで説明してしまうこの表現力。洗練され尽くしています。

以上、2013年のベストゲーム達でした。まだ十分にプレイ出来ていないため今回は外しましたが、死んだゲームのキャラクターが安息を求めてメモリを彷徨うcontinue?9876543210や、2Dアクションゲームと思いきや実は3DなFezからも良作の気配を感じました。それでは皆さん、良いお年を。

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▲不要なデータはガベージコレクションによってメモリから解放される運命にある

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▲ピクセルアートの中を冒険する。美しい世界をありがとう、フィル・フィッシュ。